外食の潮流を読む(48)「串カツ田中」に見る、今なぜロードサイドなのか

2019.06.03 484号 11面

 ●「串カツ田中」「焼肉ライク」に見る、「今なぜロードサイドなのか」

 1980年代に『月刊食堂』編集部に在籍していた私としては、外食企業とは「チェーンレストラン」「ロードサイド」「ファミリー」を追求していくことがビッグカンパニーになるための必須条件であり、真の社会貢献を果たすものとなる、という教えをたたき込まれている。すかいらーくもロイヤルホストも、デニーズも皆このセオリーを踏襲していった。

 そして、何かと話題の「串カツ田中」と「焼肉ライク」が3月28日、29日と相次いでロードサイドに出店した。「串カツ田中」は群馬・前橋、「焼肉ライク」は千葉・松戸である。「串カツ田中」は昨年6月よりほぼ全店で禁煙化したことでファミリー客が増え、さらにファミリーにシフトしたプロモーションを行うようになっている。「焼肉ライク」は牛角の創業者である西山知義氏が満を持して開発し、昨年8月29日に大行列とともにオープン。16坪が月商1600万円と大繁盛を呈している。

 この2店に共通するキーワードがある。それは「お子さま」だ。

 「串カツ田中」は「3世代で楽しむことができるファミリーレストラン型串カツ居酒屋」をコンセプトとした。

 それはまず、「居心地の追求」。客席では、カウンター席、ボックス席、お座敷のほかに、ファミリーが貸し切りで使用することができるクッションフロアのファミリールームを設けた。

 次に、「食事メニューの充実」。ファミリー層が増えたことで食事の利用シーンが増えてきた。そこでメインとなる串カツのほかに、釜飯などのご飯ものを充実させた。また、ワンドリンク制とお通し代を廃止した。

 そして、「利便性の追求」。順番受付システムの「EPARK」を導入し、席の準備ができたらアラートで教えてくれる。また「O:der(オーダー)」も導入し、テイクアウトの事前予約、受け取り時間指定で、待たずに熱々の串カツを受け取ることができるようにした。

 「串カツ田中」の貫啓二社長はこう語る。

 「当初展開していた住宅立地で、思いがけなくお子さま連れのお客さまが多かった。このような傾向を捉えて『お子さまはいずれ大人になっていく。幼い時に体験したB級グルメは記憶に残る』ということを考えるようになった。そこで、串カツ田中のメインターゲットは仕事帰りの人だが、一番大切にするお客さまをお子さまにしようと決めて今日に至っている。そこでこれまでのお子さまサービスを継続し、さらに充実させていく」。

 「焼肉ライク」の場合は子ども客が増えると予想して椅子、テーブルを都心の店より低くして、「お子さまメニュー」を充実させている。

 ファミリーは健全な店にやってくる。そして、お子さまは未来につながる顧客である。真のビッグカンパニーになるためには、「ファミリー」「お子さま」に寄り添う必要があるということに、この二つの店は気付いたのであろう。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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