北海道特集
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国に先駆けて道独自の「緊急事態宣言」が出されて以降、道内でのコロナ禍はすでに約4ヵ月にも及ぶ。北海道は雪まつりなどのイベントや冬の観光シーズンと重なったため感染拡大の第1波にいち早く見舞われ、宣言解除後も急速に感染が広がった第2波の直撃を受けた。5月25日国の緊急事態宣言全面解除に伴い、道は6月1日休業要請など全面解除し経済や社会活動が徐々に再開しはじめている。
食品業界もコロナショックに翻弄(ほんろう)された。観光需要や個人消費の急激な減退が道内各地の地域経済を直撃。外食店や料飲店、観光関連、ホテル、百貨店などは軒並み大幅減収、その影響は食材、原材料を供給する食品加工や流通、酪農業、水産業にも及び、業種業態を越えて景況感は一気に悪化した。農業では、学校給食向け牛乳の出荷が停止し生乳の余剰懸念に見舞われたほか、外食など業務用需要が大幅に低下し販路を失った農作物や花卉(かき)、漁業でも外食需要の落ち込みによる魚価低迷など苦境に立たされている。また農家や水産加工業者が入国制限で外国人技能実習生を受け入れられず、食の現場を支える労働力不足も表面化した。
コロナ関連の倒産や廃業も相次いだ。2月下旬食品加工の北海道三富屋(栗山町)が破産。6月20日には、札幌の老舗ホテル・札幌第一ホテルが、利用客激減で経営の見通しが立たず閉館に追い込まれた。帝国データバンク札幌支店が発表した4月の道内企業倒産集計(負債額1000万円以上、法的整理のみ)は、倒産件数が前年比7件増の24件、負債総額は同7.2%増の32億1700万円。道内は、この数ヵ月で計り知れない経済損失を被った。
一方、家庭用食品の動きは堅調で、スーパー各社は販売を伸ばした。外出自粛やテレワークなどを背景に巣ごもり消費が急増。家庭で調理、食事をする機会が増えた結果、青果、精肉、鮮魚などの生鮮素材をはじめ、即席麺、缶詰、レトルト食品、冷凍食品など保存性の高いジャンルが急伸し、小麦粉、ホットケーキミックスなど欠品も相次いだ。
新型コロナで大きく変化する生活環境を見据えた業態転換や新事業参入などの動きも出はじめている。経済回復や需要喚起など対策も急がれる。北海道は、7月から道民の旅行代金の最大半額を補助する「どうみん割」の事業を開始。札幌市も定山渓の宿泊施設への誘客促進策として割引クーポンを市民対象に5万人分配布を打ち出すなど、経営に深刻な打撃を受けている観光事業者を支援し観光立国・北海道の復活を後押しする。JAグループ北海道では人手不足に陥った農家支援として、地元人材の雇用や外国人技能実習生の入国遅延でかかった経費の一部を各地のJAなどに助成する事業を開始。外食チェーン各社も、持ち帰りや宅配需要の取り込み、冷凍食品の販売など業績回復や事業維持への戦略を打ち出している。
道は6月1日、感染予防と社会・経済活動を両立させる道内版の新しい生活様式「新北海道スタイル」の実施を掲げた。道産子らしい不屈のチャレンジ精神で未曽有のコロナ危機を乗り切っていきたい。北海道が日本の食料供給基地としてこれからも機能を果たし続け、そして食と観光に代表される北海道ブランドを守り抜いていくためにも、一刻も早い事態の終息と経済の復興を願うばかりだ。逆風をやり過ごしながら、新時代へと始動しはじめた北の大地、「ガンバレ北海道!」。(北海道支社長=長島秀雄)
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