ビール愛をリアルタイムで共有 メーカー公式オンライン飲み会を比較

Zoomで開催された「いいかも!オンライン飲み ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR」

Zoomで開催された「いいかも!オンライン飲み ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR」

大手ビールメーカーが開催する「オンライン飲み会」は開始時期の多くが3〜4月であったが好評の声が多く、7月現在もオンライン飲み会を開催予定のメーカーもある。話題となるオンライン飲み会はビデオ会議ツールZoomやYouTubeを利用したものが多く、それぞれの特徴を見ていく。

【アサヒビール】参加者1000人で一斉乾杯 有名タレントとの友達的距離感は独特

「いいかも! オンライン飲み ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR」と題したアサヒビールの企画の第1回は4月25日にZoomを利用し開催された。1000人が抽選で選ばれ、オンライン飲み会としては過去最大規模だ。

1000人限定のバーチャルバーというのが何よりものビッグテーマではあったが、参加メンバーにお笑い芸人三四郎の小宮浩信と相田周二、アイドルグループ乃木坂46の秋元真夏、アサヒビールイメージガールの高田里穂などが入っていたことも目玉になっていた。一般参加者からすると、芸能人との不思議な友達的距離感が貴重な経験だったに違いない。

スーパードライオリジナルバーチャル背景も好評なコンテンツの一つだ。パソコン用・スマートフォン用に準備されたビールマーク、アサヒロゴ、メッセージなどそれぞれ4種類の背景はオンライン参加中に自由に変えられた。他にもバーチャルアプリのARを利用したSNSコンテンツ企画などもあり魅力は多い。

「一緒に飲む」ことで人と人をつなげられるというビール本来の価値を伝えるため始まったアサヒビールのオンライン飲み会。6月26日には東海地方在住者限定で「ドラゴンズ応援オンライン飲み会」も開催した。

【サッポロビール】有名飲食店やアプリ会社とコラボ 「オン飲み」初心者の極意7ヶ条も

サッポロビールのオンライン飲み会の特徴は、自社での完結ではなく有名飲食店やグルメアプリ運営会社などとのコラボ企画だといえる。

2015年から開催している「逸品グランプリ」は、エビスビールに合うオリジナルの逸品を恵比寿の料理人が考案するというもの。「逸品グランプリ2019」の上位5位の有名店とオンライン対話する形で、5月2~6日に「ビールおねえさん」でタレントの古賀麻里沙がYouTubeでライブ配信を行った。

「SAPPOROオンライン飲み会」第2弾は、5月16日にアルプス音楽団の生演奏をYouTube で配信した。銀座七丁目ビヤホール5階にある音楽ビヤプラザで、本格的なオペラからビヤホールの定番ソングまで、毎日がオクトーバーフェストのように楽しく乾杯できるようにとの計らいだ。

「オン飲み」初心者の極意を公式サイトで紹介

グルメアプリを運営するキッチハイクと2018年から共同サービスをしている「HOPPIN’ GARAGE」では、新発売のビールを用いたオンライン飲み会を4月16日に開催。新製品発表会の無料ライブ配信だけでなく、イベント申込者同士で乾杯できるオンライン飲み会をセットで企画した。

「HOPPIN’ GARAGE」では、一般消費者が企画者となって、オリジナルビールを試作している。商品化4本目となるオリジナルビールを当日のライブで発表。ライブ後のオンライン飲み会ではイベント申込者全員に、新発売のビール1ケース (12本) を事前に届けるなどサッポロビールの太っ腹な一面も見られた。

オリジナルのメッセージとして、「オン飲み」初心者であれば心がけておきたいポイントを項目化している「極意7ヶ条」というものがある。オンライン飲み会参加者にとっては知っておいて損はしない内容だろう。

<#うちのオン飲み 極意7ヶ条>
その1 ビールやグラスにこだわるべし!
その2 お菓子専用トングを用意すべし
その3 画面いっぱいで乾杯すべし!
その4 リア充バーチャル背景を設定すべし!
その5 飲みかけの缶は「ナナメ缶チャレンジ」すべし!
その6 離席する時はバーチャル背景で分身すべし!
その7 〆の一言で潔く退室すべし!

【サントリースピリッツ】実はオンライン飲み会のパイオニア 2009年に新しいスタイルを提案

「オンライン飲み会」や「Zoom飲み」という言葉は、コロナ禍で最近出てきたように見えるが、実は10年以上前にサントリースピリッツは人気商品である缶チューハイ「ほろよい」をテーマにしてオンライン飲み会を開催していた。

SNSサービスTwitterのシステムと連携し、2009年3月から発売開始した「ほろよい」のスペシャルサイト「ほろったー」が、同社のオンライン飲み会のきっかけとなる。「ほろったー」ではアバターを作成したユーザー同士が、自由にコミュニケーションをとれる。同品ターゲットの20代だけでなく幅広い世代から支持され、2010年5月末までのサイト会員総数は約5万人を超えていた。

「ほろったー」上での特別イベントとして「ほろよいスペシャル飲み会」と題し、著名人やタレントのトークイベントを、サイトでライブ中継を不定期開催したのが2009年。お笑い芸人の有吉弘行や俳優の佐藤健などがリアルタイムで”つぶやき”を書き込み、それに対してユーザーも質問の投稿、アンケートへの回答、トークへの参加が可能となった。

mixiアプリ「みんなで宅飲み カンパイ!ほろよい部屋」

サントリーのmixiアプリでもオンライン飲みが2011年には開催されていた。「みんなで宅飲み カンパイ!ほろよい部屋」とタイトルにあるように、自分のアバターと部屋を自由にカスタマイズすることにより、他ユーザーとの交流が可能になる。バーチャルで自分の家やマイミク(友人ユーザー)の部屋でおしゃべりをするなどができた。

お酒を飲む時間帯に若い人がやっていたのがネットだったということを、若者のお酒離れの解消のヒントとし、チャット形式で何かできないかと編み出した本企画。お酒が苦手な人でも飲みやすい「ほろよい」を生かし、ネットコンテンツとして立ち上げた。

まだ今のような「顔出し」スタイルではなかったが、チャットスタイルでのオンライン飲み会の反響の高さはその時すでにこの市場の可能性を大きく示していたといえる。

【キリンビール】田中みな実と指原莉乃の恋愛トークも味わえるWEBムービー

キリンビールのオンライン飲み会は、スペシャルWEBムービー配信だ。フリーアナウンサーの田中みな実とタレントの指原莉乃がオンライン飲みをしている様子を無料配信。他ビール会社の一般ユーザー参加型の「オンライン飲み」に対して、キリンは「オンライン飲み」のイメージとして有名人のトークムービー配信という形を取った。

キリンビールスペシャルWEBムービー「おいしいって、うれしい。」編が6月18日に公開された。プライベートでも親交の深い2人が、おすすめのビールのおつまみを楽しみながら、普段の生活や恋愛トークなどを繰り広げるというものだ。

YouTubeで公開されている『キリン一番搾り 指原莉乃×田中みな実「おいしいって、うれしい。」篇 フルver.』

指原が「特に一緒のものをそろえてご飯を食べると、より身近に感じますよね。飲み物も一緒だし」と言うように、「離れていても共有できる気持ちと時間」というオンライン飲みのよさが見て取れる。ビール好きな2人が「一番搾り」を飲みながら離れていても「おいしい!」を共有する面白さをありのまま表現。

ビールに合わせるおつまみには、2人からは「とり天」や「ギョウザ」、「オイキムチ」などの意見があった。また田中みな実からの「結婚願望あるの?」「彼氏いるの?」といった直球質問なども繰り広げられた。

【ヤッホーブルーイング】社員のオンライン飲みをライブ配信 ユーザーのコメントに回答も

ヤッホーブルーイングは、以前から度々放送していたヤッホーブルーイング公式オンライン飲み会番組を「YouTube Live」で3月27日に配信。すでに30回以上開催しているオンライン飲み会は昨今の家飲み率の上昇に合わせての動きであった。

3月にオフィシャルTwitterアカウントにて、社員同士のオンライン飲み会を投稿したところ予想以上の反応を獲得。それがライブ配信へとつながる。大きな特徴は、社員が前面に出るというスタイル。

配信した「よなよナイト」は、第1にユーザーとの双方向的なコミュニケーションを大切にしている。コメントを積極的に拾い、それに対して画面上に映る在宅社員が答えたり意見の交換を重ねる。

「超宴」をよなよなエールTwitterアカウントで告知した

自分の質問に対して丁寧に話してくれるので、観ている側にとっては一緒に飲んでいるかのような親近感を得られる。おいしいクラフトビールの飲み方や、ビール事情などリアルなことを知りたい人にはお得なオンライン飲み会ともいえよう。

4月14日に発売の「僕ビール君ビール」をテーマにしたライブ配信や、5月21日の「かえるナイト」、6月30日の「お月見しながら乾杯しナイト」など、積極的に社員による楽しいビールトークが繰り広げられている。

現在の状況を踏まえ、2015年から始まったヤッホーブルーイング主催のファン向けのアウトドアビールイベント「超宴」も、初めてオンラインで開催された。

5月30日と6月6日開催の同イベントでは、看板商品「よなよなエール」や限定ビールなどを生かしたビールトークを展開。現場の声によるおすすめのおつまみレシピや、パワフルな社員達の様子は、他のビール会社のオンライン飲み会とはまた一線を画す。

「オンライン○○会」の幅は広がる可能性あり

ビールメーカーによる「オンライン飲み会」の特徴を述べてきたが、各社がオリジナル性を十分に出していることがわかる。単刀直入にステイホームを狙った戦略とも考えられるが、何よりも「こんな今だからビールの楽しさを共有して欲しい」という社員の願いが伝わる取組みだ。

無料ツールを利用したオンラインイベントは大小関わらずこれからも増えていくに違いない。アルコール関連だけではなく、他業種の「オンライン○○会」の動きがあれば見ておきたいものだ。

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