ごま小百科 独特の風味-健康保持にも欠かせぬ栄養成分

1995.10.16 87号 20面

●ごまのルーツ

ごまは、仏教の伝来とともに朝鮮を経て日本に伝わったとされていたが、縄文時代の遺跡からごまが出土、古い時代から栽培されていたことが分かってきた。わが国最古(八世紀)の大宝律令にも、ごま油が税や貨幣の一つとして加えられていたと記されている。

●生産量と輸入量

ごまは、赤道を中心に温帯から熱帯地域のほとんどの国々で栽培されている。全世界の生産量は約二二〇万tで、全体の約三三%がインド、約二〇%が中国で二ヵ国で五〇%以上を占めている。

だが、国産ごまは現在、商品として取引されていない。日本の輸入量は昨年で一四万t。

●ごまは栄養の宝 庫

ごまの種類は、黒色ごま、黄(褐)色ごま、白色ごまの三種類。単に種皮が違うだけでごま本来の栄養成分には差異はない。

また、ごまは、水分が少ないことと相まってエネルギー源としての三大栄養素のうち、カロリーの高い脂質(油分)五〇%以上とタンパク質約二〇%、糖質を一五%ぐらい含んでいる。なお、カルシウム、リンなどのミネラル(無機質)も多く含まれているので、昔からごまは栄養の宝庫といわれ、健康生活源として最も優れた食品の一つに挙げられている。

●老化防止にもき くごま油

人体には、なくてはならない脂肪酸がある。食用油には必ず脂肪酸が含まれ、その種類も多い。中でも体にとって特になくてはならない不飽和脂肪酸の一つにリノール酸がある。リノール酸は体内でつくることができないので、外から取り入れなければならない。そのリノール酸の役割は、体内で重要なホルモンを合成し、血液中の悪玉コレステロールを低下させるなどの働きをしている。

一方、最近分かってきたことだが、リノール酸同様にオレイン酸もコレステロールの低下に効果があることが判明。ごま油にはこのように、健康保持・成長・老化防止などに欠くことのできない大切な成分であるリノール酸・オレイン酸が、バランスよくそれぞれ四〇~四五%含まれている。

●ごま油は変敗臭 がしない

昔からごま油は、天ぷらに使用したとき軽く揚がるとか差し油を繰り返しても変敗臭がしないなど、また日持ちのよい油であるといわれてきたが、これらの作用はセサモールに始まるリグナン化合物によるもので、これらはごまにしか含まれていない特殊な微量成分で、ごま油の抗酸化性の主体をなすもの。ごま油には、ビタミンEも比較的多く含まれ、抗酸化性に寄与しているものと考えられている。

●スタミナ増強を 促進する必須ア ミノ酸が豊富

ごまのタンパク質は、非常に良好であることが最近の研究で分かってきた。タンパク質には必須アミノ酸といわれる十数種類のアミノ酸がほとんど含まれている。タンパク質は、人体の細胞にとって欠くことのできない構成成分で、成長を促進し、健康を保持し、スタミナを増強する大切な成分である。

ごまのタンパク質を構成しているアミノ酸は豊富で、大豆やトウモロコシに比べてメチオニン、シスチンなど八種類はその含有量が優っていることもはっきりしてきた。

なお、ごまを西洋では“含油種子の女王”と呼び、その独特の香ばしい風味が広く賞味されている。中国では“油の王様”と呼び、そのおいしさと、高い栄養価を讃えている。

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