メニュートレンド:もう一度食べたくなる神秘的な味わい 「魔法の粉」「洗い出汁」
コロナ禍の飲酒不況により、比較的好調な焼肉に業種転換する居酒屋が増えているが、業種の強みだけで通用するほど簡単ではないだろう。焼肉は本来、肉の品質よりも、脳裏に焼き付くタレのおいしさが決め手。もう一度食べたくなる、神秘的な味づくりがリピートを呼ぶ。そんな焼肉の味づくりで話題を呼んでいるのが、焼肉「金剛園」(苫小牧市内5店舗)の「魔法の粉」と「洗い出汁」だ。
●クセを緩和し余計な脂を洗い流す! 食わず嫌いの注文を喚起
「魔法の粉」は、柑橘類の粉末をベースに6種類の香辛料を独自配合したシーズニングで、生肉(正肉やホルモン)の表面に振りかけて提供するもの。焼くとスパイシーな風味が肉を包み込み、肉の持ち味をより一層、奥深く演出する。
同時に酸味が利いた「洗い出汁」をコンビで提供。本品は牛骨スープをベースに柑橘汁を配合しただし感覚のつけダレ。肉の脂身やクセを洗い流し、サッパリと食べやすい味変化を演出する。熱々の肉を食べやすく冷ます効果もある。
「魔法の粉」と「洗い出汁」を商品化したのは昨年6月。高品質なホルモンを入手できる北海道でも、意外に食わず嫌いが多いことを残念に思い、抵抗を和らげる解決策として考案した。
開発者の須藤雅也専務は「においや、脂っぽさを気にする声が多いので、緩和策として、シーズニングとだしのセットに着目しました」と語り、「アウトドアブームでスパイスが注目されていることも追い風になりました」と説く。
第1弾の「とろホルモン(牛小腸)」で手応えをつかみ、今年3月から「上ミノ」「豚ホルモン」「和牛ブリスケ」「鶏カルビ」を追加した。初めの月販は基幹5店舗で合計1500食強。今後、売れ筋の指標である月販3000食は問題なくクリアする見込みだ。
焼肉の調味(タレ)は、4系統(醤油、塩、味噌、辛味噌)の味覚は定番化されているが、5番目の味覚は意外に出てこない。それだけに差別化の好機でもあるという。
「焼肉の基本を踏まえ、地元志向の味づくりを研さんしています。しかしそれだけでは飽きられるのも事実。苫小牧市の人口は約17万人、対して当店は5店舗。限られた商圏でリピートを維持するには、常に飽きさせない創意工夫が必要です」(須藤専務)と言う。
同店は、地産地消で地元に貢献するため、道産野菜を活用したサラダバーや野菜料理に注力。近隣のトマト生産者と連携して「トマトカルビ」をヒットさせるなど、地元びいきな商品開発で知られる。またコロナ禍では、弁当や精肉のテイクアウトを先駆け、好調だった前年をも上回る実績を残し、同業者から注目された。「魔法の粉」と「洗い出汁」のコンビも焼肉業界で話題を呼びそうだ。
●店舗情報
「金剛園」(全10店舗・焼肉以外を含む)
経営=金剛園/本店所在地=北海道苫小牧市新中野町3-9-6/開業=1985年/席数=144席(本店)/営業時間=11時~22時30分。無休/平均客単価=昼1200円、夜2800円/平均集客数=年間約45万人(苫小牧市内の焼肉5店舗実績)
●愛用食材・資材
「特選コリア料理専用純正 薬味唐辛子」徳山物産(大阪市生野区)
バランスが秀逸で使いやすい濃度
唐辛子、ニンニク、ショウガなどを配合したヤンニョムジャン(薬味入り辛味噌)。「とにかくバランスが秀逸。使いやすい濃度で、料理や素材の持ち味を尊重しながら、辛味と塩味を調整できる」(須藤専務)と言う。石焼きビビンバなど、ご飯料理の薬味に不可欠。炒め物やスープのアクセントにも好適。
規格=1kg(常温)