アポなし!新業態チェック(189)「天丼てんや」エキア北千住店

2023.05.01 531号 10面

 昨年11月、ロイヤルホールディングスは、東京・北千住にある既存の「天丼てんや」を次世代型店舗としてリニューアルした。同店は東武鉄道の東武スカイツリーライン(東武伊勢崎線)北千住駅の改札内に位置する駅ナカ店舗。約24坪22席というやや小型の店舗であり、奥行きがなく横に伸びる店内は客席レイアウトの自由度が低い。しかし動線の見直しやオーダー端末などの機器を導入することにより、店舗運営の効率化と客席のゆとりを両立させた。同社がこれまでテストを重ねてきた取り組みや、今回新たに採用した施策を1店舗に集約した新型店舗となる。

 メニューは従来の店舗と同じだが、大きな特徴は次のようなものだ。まず、駅ナカという立地を踏まえて客席はカウンター席のみとし、各席にはタブレット型のオーダー端末を配置して、来店客が従業員の接客を待たずに注文できるスタイルとした。厨房にはオーダー端末と連動したキッチンディスプレイを設置。提供時間を確認しながら素早く調理作業を行うことができる。また、会計カウンターにはセルフと対面の両方で使えるセミセルフレジが2台用意され、会計待ちのストレスを軽減。店内レイアウトは動線を見直し、従業員の動きやすさを向上させると共にカウンター席の幅や奥行きを従来よりも広めに取る設計とした。その他、店頭にはデジタルサイネージを配置して食品サンプルやバナー掲示などを減らしている。

 同社では、同店をベースにさらに改良を重ねていく計画であるという。

 ★けんじの評価:これまでの実験が成果を発揮するか

 ロイヤルホールディングスは、コロナ禍で大きく注目されたDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル情報技術による社会変革で人々の暮らしを豊かにすること)に比較的早くから挑戦してきた外食企業だ。2017年、同社は完全キャッシュレス決済や厨房サポートシステムを導入した新業態「ギャザリングテーブルパントリー」を東京・馬喰町に出店。同ブランドは19年、その2号店を同・二子玉川にオープンしている。また18年には浅草の「天丼てんや」を完全キャッシュレス決済に対応した「大江戸てんや」としてリニューアルした。これらの店舗はいずれも現在は撤退しているが、実験店という位置付けから考えればその役割は十分に果たしたのだろう。

 新型コロナウイルスの影響が拡大したここ数年、外食各社の新業態や新ブランド発表が減っていたのは事実だ。しかし、同社やすかいらーく、デニーズなどのような老舗の外食企業では、DX対応などを含めた既存店の店舗や運営の見直しが行われてきた。すかいらーくは昨年、かつてはファミリーレストランに標準で設けられていたカウンター席を再び導入。また、約3000台の配膳ロボット導入を発表し、すでに同社の店舗では配膳ロボットによるサービスが当たり前の風景となった。デニーズも昨年暮れ、ポストコロナを見据えて居住性を重視したリニューアルを発表している。

 次世代型をうたう今回の店舗が、同社の研究開発の成果を発揮するかどうかは注目に値するだろう。

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「天丼てんや」エキア北千住店

 開業=2022年11月10日/所在地=東京都足立区千住旭町42-1 東武北千住駅2階コンコース

 ●編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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