百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ボケ(木瓜)

2004.04.10 105号 9面

マタタビとボケは、いずれも古くから庶民の生活に親しまれてきた。マタタビは生食・薬茶・薬酒に大活躍し、それぞれにファンがみられる。ボケは平安期に中国から渡来し適地として全日本に分布。香りがよく、薬酒・果実酒としても効用が大きいのでファンは定着。ともに伝統ある庶民の味として長く、広く愛されていくに違いない。

(食品評論家・太木光一)

ボケは中国原産のバラ科の落葉低木で中国語では「モッグア」。高さは二~三メートルで幹は滑らかでトゲ状の小枝がある。日本には平安時代に渡来し歴史は古い。

ボケは温暖にして湿潤的気候を好み、日本は適地として全土にみられる。中国では浙江・湖北・四川・湖南・河南・陜西各省が主産地。

3月から5月にかけて枝先に紅色(ヒボケ)・白色(シロボケ)・紅白のまだら色(サクラボケ)の美しい五弁花を開き花後、堅い果実を結ぶ。

現在でもボケは赤・橙・白・桃など花の色はバラエティーに富み、毎年新品種の発表がある。

果実の採取時期は、果実が黄変する前の緑がかった9月から10月にかけて。約三センチほどの大きさで、かむと酸っぱい。

生のボケの実は非常によい香りがして、この実を卓上に置くと部屋いっぱい芳香が漂う。このボケ酒づくりが最高で、よく洗って水気を切り、丸のままか、二つ割りにする。種子からもエキスがでるので捨てないこと。

果実の量は容器に対して一〇分の三~三・五程度に。砂糖は大さじ三杯程度とし、甘味不足の場合は、あとから調整する。

二つ割りの場合は、ほぼ一ヵ月、丸漬けの場合は二ヵ月ぐらいで用いること。熟成するには三ヵ月以上を要する。

ボケの成分はクエン酸・リンゴ酸・酒石酸・タンニンなど。赤痢やコレラなど誘因菌の抑制作用が認められている。

ボケ酒は黄色の混ざった美しいコハク色に仕上がる。爽やかな香りと酸味、ほのかな渋味は数多い本草酒の中ではひときわ目立つ。

しかも効用として、強壮・精神安定・神経衰弱・疲労や病後の回復・利尿・せき止め・貧血症・食欲増進・美容などと広い範囲で期待される。

またボケを煮てすりつぶしたものにはちみつを加え、しょうがと一緒に軽く煎じて冬の寒い日などに飲むと保温・不眠症・冷え性などに効果的だ。

この木瓜を『中薬大辞典』でみると、歴史の古い薬材であるため数ページが充てられている。性味は酸にして温。主たる効用は平肝・和胃・筋肉のけいれん(転筋)・治吐瀉・脚気・水腫・痢疾ほかによいと記されている。

特に暑気あたりによる吐き出しに、ボケの煎用が勧められている。現在でこそ赤痢やコレラなどの誘因菌の抑制作用が認められているが、病名の判別できない時代に特効のあることがすでに記されている。ボケ酒は低血圧症にも効果大としている。

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