だから素敵! あの人のヘルシートーク:タレント・浜村淳さん

2005.02.10 115号 4面

「さて皆さん…」の語り口で、ラジオ番組のパーソナリティーや映画解説者として知られる浜村淳さん。昨年末発売した、その語り口と音楽で名画を振り返るユニークなCD『浜村淳の甦る心の名画座』の収録周辺などを聞いた。

候補はたくさんありましたが、特に思い入れが強い作品、音楽が素晴らしいものを厳選して、アメリカ映画編とヨーロッパ映画編、各8作ずつを収録しました。中でもお奨めですか。女性には『慕情』『ある愛の詩』、そして『太陽がいっぱい』。男性には、何と言っても『アラビアのロレンス』、それから『第三の男』『禁じられた遊び』。『ゴッドファーザー』でしょうか。

アメリカ映画とヨーロッパ映画のどちらが好きか、よく聞かれますね。

アメリカはいろんな国からいろんな人が集まってできた国。だから夢を持ち込むのが全盛の頃のアメリカ映画でした。

対して歴史の古いヨーロッパでは、貴族階級から庶民まで、人間の暮らしをじっくりとリアルに描き出す。同じ庶民の暮らしぶりでも、イタリアの『鉄道員』は「ああ、悲しいなあ」で終わる。アメリカのチャップリンとなると「明日はもっと良くなる。夢と勇気を持とう!」がテーマになります。

昔の日本のインテリは断然ヨーロッパ派だったんだそうです。どちらにも良さはあるんですよ、もちろん。でもね…。好みで言ったら僕はアメリカ映画が好きなんですね。

そのアメリカ映画もベトナム戦争以来、変わってしまいました。考え込むような神経質なものが増えました。やっと昔の古きよき時代のアメリカに戻るかなと思ったら、またイラク戦争が起こった。こんなことをやっていたらダメです。その隙間を狙ってグーッと出てきたのが韓国映画でしょう。これは夢というより純愛ものですが、国家が力を入れて本格的に映画をつくろう、映画人を育てようとしているから、続々といいものが出てくる。

映画ってね、国家が発展途上にある時にいいものが生まれるんです。日本でも戦争で負けてボロボロになって、そこから立ち直り始めた昭和30年代、名作がたくさん生まれています。昭和29年、日本はまだ傷だらけでしたが、その1年間だけで『七人の侍』『二十四の瞳』『ゴジラ』と素晴らしい映画が3本も出ています。それだけ「よし頑張っていこう!」というエネルギーがあったわけです。

だからね、こういうことは言えませんか。なかなかうまくいかない時代だったり、状況だったりした時、伸び盛りの時代や国の映画を観れば、きっと力が沸いてくるはずです。

食事の場面は必ずあって、それは映画全体のテーマを象徴していることが多いです。みんなで食事をする、それは幸せの象徴です。食事の場面が貧しかったら、その映画は悲劇を現していることになります。

『ティファニーで朝食を』でヘップバーンがコッペパンを立ち食いでかじる場面、あれは彼女の内面を現しているでしょう。『インディジョーンズ』の2作目、主人公がインド奥地の立派なお城に招待されます。その食事の場面はものすごかった。大蛇の姿焼きとかカブトムシの脳みそとか。カリカチュアとしてのインドの神秘性ですね。『プラトーン』では、ベトナム戦争の最前線、密林のどしゃぶりの中、兵隊たちが雨宿りもできない木陰で、立ったままクラッカーみたいなものを食べていたじゃないですか。その貧しい食事には、一夜にして何人かが死んでいく場面よりもさらに、戦争の悲惨さが現れています。

逆に役者が何を食べていたかで、作品が変わってくることもあるんです。『山椒太夫』の現場で溝口研二監督は、安寿と厨子王の母親役の田中絹代さんにこう命じたそうです。ラストで目を泣き潰した老女に身をやつしながらも、はいずって港まで、岩によじ登り、出て行ってしまった船に向かって何遍も叫ぶシーン、どうにも監督は気に入りません。それで「いまから鎌倉の自宅へ帰って1週間絶食してもらいたい。そしてまた京都の現場に来ていただきたい」と言った。

絹代さんは、鎌倉へ帰って歯を食いしばって絶食しますが、6日目にたまりかねてビフテキを1切れ食べたんだそうです。そして京都へ行った。録音室でスクリーンの自分の姿、口の動きに合わせて「安寿ー、厨子王ー」と叫びます。監督は「カット!」、そして「絹代さん、ビフテキ食べたでしょう。あなたのいまの声にビフテキのツヤが出ています」と言ったそうです(笑)。

結局それから撮影所の周りを5周走って、息も絶え絶えの状態で録り直し、OKが出たそうですよ。

◆プロフィル

はまむら・じゅん 1935年京都府生まれ。75年に始まったMBSラジオ『ありがとう浜村淳です』は聴取率全国No.1を獲得した有名長寿番組として関西でその名を轟かせている。読売テレビ『2時のワイドショー』内の映画紹介コーナーでは、独特の「浜村節」が好評だった。2002年には、「モーニング娘。」に対抗してオヤジユニット「イブニング親父。」を藤村義一らと結成。タレントとしては初めての国立大学(和歌山大学経済学科)講師としても話題となった。

著書に『さてみなさん聞いてください 浜村淳ラジオ話芸』『浜村淳のお話大好き』『淳ちゃんの名作映画ありがとう』ほか多数。

元気な方だと思います。わりと粘りがきくというか、1日に5~6つの掛け持ちがあっても、バテたりはしませんね。ラジオの番組でもう20年くらい、黒酢やニンニク、卵黄などサプリメントの紹介をする機会が多かったので、活用し出したのは早い方だったと思います。それが役に立っているんでしょうか。

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