ようこそ医薬・バイオ室へ:覚えのある痛み再発…それは尿管結石

2005.11.10 124号 6面

先日、右の腰に軽い鈍痛を感じた。何となく覚えのある痛みで、3年前の悪夢を思い出した。

それは、朝起きると脂汗を流すくらいのいたたまれない苦痛を背中に感じ、あまりの痛みに吐き気までしたため、自分で救急車を呼んで病院に担ぎ込まれた。尿管結石であった。2度目ともなると落ち着いたもので、早速病院へ行ってCTを撮ってもらった。

すると、きれいに腎臓に光るものが数個発見された。CT断層は1cmおきの輪切りなので、実際はもっと個数が多い可能性が高いものの、いずれも小さいので石を溶かす薬を飲んで自然排出を待つことになった。

この小さい石というのがクセ者で、約5mm以下の石だと自然排出されて痛みはない。1cm以上だと腎臓から尿管に落ちないので、少なくとも当面は激痛に襲われることはない。ちょうど5mm前後の石が尿管に落ちて尿管を詰まらせ、尿が通れなくなるため、腎臓の水圧が高まって背中が痛くなるのだ。ただし、1cm以上の石の場合には、尿管の口が不完全に塞がれた状態が続くと、いずれ腎不全になったり大変なことになるので、「痛いうちが花」ともいえる。

最近の日本における尿路結石(腎結石、尿管結石、尿道結石を合わせたもの)の発生頻度は昭和20年代初期に比べると約4倍に増加している。30代以上の男性にもっとも多いが、男女比はほぼ5対2で、男性11人に1人、女性26人に1人が一生の間に1度は罹患することになる。高血圧が10人に1人といわれるので、それ並みの非常にポピュラーな病気になりつつある。

で、多くの尿路結石の「石」の成分はシュウ酸カルシウム(略してシュウカル)だ。以前は「石持ち」の人は、成分であるシュウ酸やカルシウムを多く含む食品はあまり食べないように指導されていた。ホウレン草のゴマ和えや、クリームシチューなどはとんでもなかったわけだ。ところが、最近の学説によると全く逆で、シュウ酸とカルシウムを積極的に一緒にとるのが尿路結石の予防にいいらしい。

ほとんどの野菜やココア、バナナにシュウ酸が多く含まれているが、シュウ酸が多い食事だと、小腸からシュウ酸が吸収されて血液に乗り、腎臓にもともとあるカルシウムと結びついてシュウカルになって腎臓内に堆積してしまう。シュウ酸とカルシウムを一緒にとると、小腸内で早くも結合してシュウカルになるが、シュウカルは小腸から吸収されないので、そのまま便として排出される。

そして、特に最近尿路結石の患者が増えている原因として、食生活の変化があげられる。つまり、高脂肪の食事を多くとると、脂肪が分解されて脂肪酸とグリセリンができるが、この脂肪酸がシュウ酸よりもカルシウムとくっつきやすい。つまり、小腸内でシュウ酸よりも先にカルシウムにくっついてしまい、あぶれたシュウ酸は仕方なく小腸から吸収されて腎臓に溜まるという。

高カロリー食が尿路結石の原因だとすると最近の患者数の増加の原因も納得できるし、尿路結石も立派な生活習慣病の1つといえる。というわけで、シュウ酸をとらないことは困難なので、とりあえず私も食生活を改め、できるだけカルシウムをとり、低カロリーに努めて、頻繁にエコー検査を受けることにしよう。

ところで、妻は「また胆石できたん?」と、何度説明しても胆石と尿路結石の区別がつかない。胆石は肝臓で作られる胆汁を一時的に貯める胆のうにできる石で、その主成分はコレステロール。ま、確かに痛む場所や高脂肪食がよくないことは大体一緒であるが…。

(バイオプログレス研究所主宰・高橋清)

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