中国緑物語 景徳鎮で出会ったふしぎ卵

1997.06.10 21号 20面

中国は江西省へ風薫る季節、旅に出た。この地にはやきもので有名な景徳鎮という街がある。千年にわたるやきものの歴史を眺めていると、各時代、時代、そこに盛られたであろう食べ物を想像したくなる。いい器ある所、きっといい食のながれがあったに違いない。

緑に輝く街並をそんな空想をしながら歩いていたら、実にふしぎな食材に出会った。まるで宗代にこの街でさかんに作られていた青磁のやきものの色にそっくりな卵。まさかここでは卵にも釉薬をかけてお化粧するなんて?--そんなばかげた冗談が頭に浮んだ。

地元の人に聞いてみたところ、江西省に昔からある変わった卵なのだという。羽毛だけでなく肉、骨まで真っ黒のにわとりから産まれるのだそうだ。産地は景徳鎮をすこし南西に下った東郷県。

食べると元気になるので滋養強壮の効果があると長い間されてきたが一九八五年に国家分析試験センターで調べたところ、思った通りヨウ素、亜鉛、セレンなどの数値が高いことが認められた。そのため高血圧病・動脈硬化などの血管系の病気、糖尿病、ぜんそく、直腸ガン、甲状腺症、皮膚病--の症状改善や水銀・ヒ素などの毒性物質の解毒作用に効果があるという。生命と若さを保つ卵ということらしい。

陰陽五行説から転じて、この国では色に意味合いが持たされているという話をかつて聞いたことがある。赤は“名誉”、黄は“中心”、そして若々しさや出発を感じさせる緑はたしか“健康”だったなと思い出した。

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