百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「パセリ」添え物ではもったいない効用

1997.08.10 23号 14面

日常の食生活に長い間親しまれているが、その食効はあまり知られていない。しかし、この2品目はいずれも栄養の宝庫で食べる総合ビタミン食といえる。食べやすく特に高齢者におすすめ。

(食品評論家 太木光一)

パセリはセリ科の二年生の越年草で、原産地は南欧・地中海地方である。ギリシャやローマでは紀元前から愛用され、栽培の歴史は極めて古い。

日本には一八世紀に長崎に渡来しオランダセリと呼ばれていた。品種として平葉種とちりめん種と根用種の三種類がみられる。一般にはちりめん種の縮みの細かい鮮緑種のものが好まれている。

パセリの栽培は都市近郊に限られ、多くは春まき。3月に種をまき5月に定植し、7月から翌春抽台まで収穫できる。

特徴として、高さ三○~六○cmの茎から多くの分岐がみられる。全株無毛で葉の色は濃緑色。しかもくさび形で深く切れ込み、著しく巻いて縮みがみられる。

二年目に二○~五○cmの花茎を出し、黄緑色の小さな花を多数つける。性質としては冷涼な気候と適湿を好む。

パセリは全草にキニーネの代用になるアピオールを含み、特有の香気を持っている。特に肉料理などのときの口中の脂を取り、またネギ類の臭気を消す効果も大きい。この点からみても、単なる添えものでないことが理解されよう。

このほか特有な爽快さと香気のため、シチューやスープなどの香味づけのほか、サラダをはじめ多くの洋風料理の彩りとされたり、刺し身やすしのツマとして見映えがよいために喜ばれている。

利用法としてポタージュに散らしたり、油で揚げたり、料理に添えられたり、ブーケガルニ(香草スパイスの束)などに使われる。料理を引きしめ美しくするのに欠かせない。

パセリの成分をみると栄養の宝庫でクレソン同様食べる総合ビタミン食である。野菜類の中ではタンパク質も多くしかも良質。繊維もごぼうやタケノコよりも多くファイバーフード(繊維食品)と呼んでもよいほどである。

無機質でも一○○g当たりカルシウム一九○mmg、鉄分九・三mmgと突出して多い。ともに日本人の食生活に不足しがちな項目である。カルシウムは骨や歯をつくる重要な成分。鉄は不足すると貧血になり、疲れやすく物忘れしやすくなる。

また微量成分の亜鉛や銅にも恵まれている。亜鉛が不足すると高齢者に多くみられる皮膚障害や味覚障害の原因となりやすい。銅不足になると骨折や貧血の因となる。

ビタミン面ではA効力として四、二○○国際単位、Cは二○○mmgである。いずれも野菜の中ではトップクラス。Cで比較するとほうれん草の二倍、キャベツの四倍、トマトの一○倍となる。AとCをこれほど含む野菜はほかにない。しかもB1・B2も非常に多い。

パセリは極めて効用の高い野菜でありながら、ツマとか添え物として食べ残される場合が多くみられる。栄養的にはトマトを残してもパセリを食べなくてはならない。価格も安く効果大。高齢者の保健に積極的な摂取を!!

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら