グレートアマゾンに伝わる不老長寿の薬 ガラナの伝説

1997.08.10 23号 20面

昭和30年代、コーラが世界中に大旋風を巻き起こす中、なぜかブラジルだけはこれが普及しなかった。ブラジルではアマゾン地区に生える不老長寿の植物・ガラナでつくる黒い不思議な飲み物が古くから根強く定着しており、コーラの進出を阻んでいたのだ。

数年前からアメリカを中心に世界中でガラナが流行。日本でもここにきて飲料メーカー各社がガラナジュースを新発売。この夏一番アツイ飲み物のとなりそうだ。

ガラナの種子には強壮・鎮静・健胃の効果がある。この効能はカフェインに由来するもの。コーラ、コーヒー、茶、カカオなど。考えて見れば、カフェインを含む飲料は世界中いたるところに存在する。さらに歴史をさかのぼれば、各地域の原住民によって古来薬用に利用されてきた。日本でいえば「緑茶」である。

緑茶の有効成分としてすっかり有名になった「カテキン」は、実はガラナにも多く含まれている。特にガラナのカテキンには、アルツハイマーを予防する効果があるという。東京大学分子細胞生物学研究所の瀬戸治男教授らの研究では、アルツハイマー病を引き起こすと考えられているベータアミロイドというタンパク質の毒性を抑える物質が、ガラナの抽出物から多く発見された。

ブラジルインディオマウエス族の数奇な歴史の中に刻まれた不老長寿の秘薬は、現代の進んだ分析技術や実験などにより、いままさに、その神秘的伝説の真相が説き明かされようとしている。

人間がまだ動物や植物と話ができたずっと昔、三人の兄妹がいた。この妹は蛇に恋されて子供を生んだが、二人の兄はそれを好まなかった。ある日子供が、兄たちの畑に入ってクリを食べていたところ、畑の番をしていた猿に殺されてしまう。悲しんだ母親が、子供の目をくり抜いて地に埋めたところに生えてきたのがグァラナー(ガラナ)であるという。

ガラナの種子は、軽い知覚麻痺の作用があるので、胃の細胞に作用して飢餓感を弱めるため、原住民のインディオたちはこれを用いるようになったのではないかといわれている。マウエス族は定住性をもち、農業も多少は営む種族なので、ガラナを栽培し蓄えるようになったものと思われる。その後ポルトガル人が入ってきてから大いに誇張されて、精力増進剤として広く知られるようになった。

(資料提供=坂本香料(株)、ヴァリグ・ブラジル航空)

ガラナのジュースでサウダージ!

乾杯のときに言うこのポルトガル語は、もともとは“健康”の意という。ガラナの種子(写真左下)そのものにはほろ苦味があるが、食後感はさわやかで嫌味がない。

ガラナはムクロジ科のつる植物。真っ赤なブドウ大の実の中には、トチの実に似た種子が入っている。原産地はブラジルのアマゾン川流域地方である。原住民インディアン・マウエス族は不老長寿の薬としてさまざまな疾病に使用していた。過酷な自然環境、他部族との闘い、そして猛獣、害虫…これらの脅威に打ち勝つ強靭な気力・体力が必要な毎日の生活の中で脈々と培われてきた果実で、現在でも愛用されている。

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