百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「淫羊霍(インヨウカク)」

1997.10.10 25号 14面

日本では強壮・強精が期待できる漢方薬というと、まず朝鮮人参の名が挙がるが、中国ではそればかりではない。薬酒にして秘薬として利用されている二銘柄を紹介する。

(食品評論家 太木光一)

淫羊霍は日本語でインヨウカクと読み、日本名はイカリ草の名前で知られている。メギ科イカリソウ属の多年草である。

別名に仙霊脾・千両金・牛角花・千鶴筋・放杖草・廃杖草ほかがみられるが、淫羊霍を愛用して足が強くなり杖を必要としなくなった話から、放杖草・廃杖草の名前が生まれた。

日本名にみるイカリ草は花の形が錨に似ているためつけられた。花期は4月から5月にかけて。花が美しいので鑑賞用に栽培されている。増やし方は株分けが多く、茎高は最大で四○㌢ぐらいまで成長する。

イカリ草は品種が多く、キバナイカリソウ・クモイイカリソウ・トキワイカリソウが日本の代表品種である。いずれも山菜として利用されているが、漢方薬剤として効力の高いのは中国産の栽培種のホザキイカリソウである。

イカリ草は若葉および花を食用とする。若葉を摘む時は、早春の3月下旬から4月にかけてがよい。天プラには葉がもう少し大きくなってからがよい。

ごま和え・辛子醤油和えなどは美味。花の二杯酢もうまい。おひたしにも向く。乾燥して薬用とするには花が終わった5~6月に採取し、陰干しする。中国では漢方薬として秋以降に採取したものが多い。

中国にみる代表品種は淫羊霍・心葉淫羊霍・箭全葉淫羊霍の三種であるが、いずれも漢方薬材となる。茎が小さく葉が多く色は黄緑を呈し葉の破れのないものが良品で陜西・遼寧・山西・湖北、四川各省産は優れている。

薬理作用として温腎壮腸・■風除湿・性機能を興奮させる作用と、末消血管を拡張して血圧を下げる作用がみられる。中薬大辞典によると淫羊霍には催淫作用大、感覚神経を刺激するとある。薬効の強い部分は葉および根部で、果実がこれに次ぎ、茎部は最も弱いとしている。

このほか咳を鎮め、たんを切る作用もあり、この目的で製剤もされている。また利尿促進効果もみられる。

淫羊霍は古来から強精・強壮の秘薬として薬酒に利用されている。茎葉の容量は容器に対して十分の七ぐらい、本数にして葉付きで一○~一五本ぐらいが適量。ほぼ一ヶ月で用いられるが熟成には三ヶ月以上を要する。爽やかな琥珀色に仕上がり、独自の香りがするが個性的な薬酒と呼べよう。

中国では小児麻痺に卓効があり、注射薬として用いられ治癒例が非常に多いとしている。また神経衰弱にもよいとしている。これには三%程度の煎液を二○日間服用すれば病状は一段と軽くなるという。

慢性気管支炎にもよく、丸薬として服用が勧められている。その他健忘症・疲労回復・無気力症・健胃整腸・血行保温・美容など広範囲に薬効が認められている。

淫羊霍酒は毎日少量(三○㌘程度)の愛飲を続けることが大切。また老人保健には乾燥葉をお茶代わりに飲んでもよい。

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