おはしで防ぐ現代病:緑茶は何ガンに効果あり?
緑茶を一日一○杯以上飲む人は、とくに肺ガンそれから大腸ガン、肝臓ガンにかかる確率が低いことが、9月末に京都で開かれた日本癌学会で発表された。これは、「緑茶を一日一○杯飲んでいる人は、三杯以下の人に比べてガンの発生が遅くなる」として以前注目を集めた研究を、さらに追跡調査を続けて分かったもの。緑茶の主成分であるカテキンがガンの発生を予防するとの研究は数多く報告されているが、今回初めて、ヒトを対象として臓器別のガン罹患率と緑茶の飲用量の関係が明らかとなった。調査研究を行った埼玉県立がんセンター研究所疫学部の中地敬副部長にきいた。
Q お茶の飲用量とガンの関係について、先生が調査を始めたのはいつからですか?
A いまから一一年前です。埼玉県内のある町に住む四○歳以上の住民八五五三人を対象に、一九八六年から調査をはじめ、そのうちガンに罹った人について、一日あたり緑茶を飲む杯数とガン罹患年齢との関係をまず分析しました。
一九九六年9月の時点で対象者のうちのガン罹患者は四一九人となり、ガン罹患年齢を緑茶飲用杯数別にみると、男性の場合、一日三杯以下では六五・○歳だが、一○杯以上飲んでいた人は六八・二歳と、三・二歳遅い。女性の場合にはもっと顕著で、三杯以下が六七・○歳なのに対し、一○杯以上飲んでいた人は七四・三歳と、七・三歳もガンが発症した年齢が高くなっていました。緑茶のカテキンには、ガンが発生する途中の段階で作用して、ガンを予防したり発生を遅らせる働きがあるのです。
さらにガンに罹る危険度を調べてみると、男性で一日十杯以上の人は三杯以下の人に比べて○・六二、女性でも同じく○・六二とガンのリスクが約四割も低いことが分かりました。
Q 肺ガン・大腸ガン、胃ガンなど、臓器別にみると、緑茶の効果が大きくあらわれやすいのはどこですか?
A 私たちの調査では、肺ガン、大腸ガン、肝臓ガンの予防効果がきわ立っていました。胃ガンの予防効果も認められました。肺ガンの場合、緑茶三杯以下を一とすれば、一○杯以上の飲用者が肺ガンに罹る危険はわずか○・三六と約三分の一にすぎません。同様に大腸ガンでは○・四八、肝臓ガンでは○・五五と低いリスクです。この結果は、これまでの多くの動物実験で緑茶のガン予防効果が示された臓器と一致します。動物とヒトの両方で緑茶の効果が証明されたわけです。