百歳への招待「長寿の源」食材を追う 「鹿茸(ろくじょう)」強壮に

1998.07.10 34号 14面

霊芝(れいし)・鹿茸(ろくじょう)は、ともに漢方として高貴薬食で庶民の口に入ることはなかった。最近では人工栽培や養殖で量産化され、強壮・強精・長寿食として見直されてきた。

(食品評論家・太木光一)

鹿は漢方食材では貴重品。鹿肉・鹿血・鹿皮・鹿角・鹿尾・鹿歯・鹿腎・鹿茸すべて重要食材だが、このなかで突出して効用の高いのが鹿茸である。

世界で鹿の種類は五八種と多いが鹿茸のとれるのはわずか三種である。鹿茸とは鹿の角の生えかかりの状態で、短く柔らかく産毛がいっぱい生え赤味を帯びている。

鹿茸のとれる梅花鹿は東北省・内蒙古などにすみ現在では人工飼育されている。このため価格も大幅に下落した。

鹿茸づくりは鹿の角を切り落とすことから始まる。鹿角になる前の幼角を指し、これには草の嫩葉のような白毛が生えこれを鹿茸と呼ぶ。骨化していないことがポイントである。

中国の薬材は一千種を超えるが専門店のあるのは人参と鹿茸店のみで、いかに貴重品であるかが理解されよう。日本では鹿茸の価値が知られず、知名度もまだ低い。

鹿茸は前漢時代から愛用されていた長い歴史をもつ。強壮・強精薬とされ、この良質な製品を取り扱う店は特別視されている。

鹿茸の性味は甘・咸・温。心拍数と心拍出量を増やし、強心の効と発育成長促進の作用がある。また増血、生殖機能の興奮作用がみられる。

李時珍によれば「精を益し、髄を補い、血を養い、陽を益し、筋を強くし、骨を健にし、一切の虚損、耳襲、目暗、眩運、虚痢を治す」とあり、老人病よサヨナラ、となる。

日茸子本草によれば「男子の腰腎の虚冷、脚膝の無力を補い、精が自溢出するもの、婦人の崩中、漏血、赤白帯下にはあぶって空腹時に酒で服す」とあり、男女ともに強壮効果の高いことを記している。

鹿茸の利用法として、鹿茸片の場合、アルコールで鹿茸毛を焼き軽く焼きとり、アルコールに浸す。鹿茸粉は乾燥した鹿茸片をつぶして細末とする。

鹿茸は有名漢方薬店で販売されているが、薄片で販売されている場合が多い。次いで粉末、丸薬、鹿茸酒などである。

鹿茸酒を作るのは容易で、鹿茸二○グラム、ホワイトリカー一リットル、グラニュー糖一○○グラム、果糖五○グラムを用意。容器に移し一日一回容器を軽く揺動すること一○日、後開封しグラニュー糖と果糖を加え溶解させる。約二カ月冷涼な場所に保管してでき上がり。

飲み方は一回二○ミリリットル、一日二回、朝・夕の空腹時に。効用は高く精力減退・虚弱体質・貧血症・強心・病後衰弱に卓効が期待。

その他の利用法として薬膳として鹿茸粥・鹿茸蛋膳・当帰鹿茸燉鶏料理などがある(燉=柔らかくなるまで煮込む料理を指す)。

またロシアでは東北省と隣接するシベリア地区にやや大型で鹿茸のとれるシベリア鹿が分布している。薬効は全く同じ。これから抽出した注射薬でパントクリン(鹿茸精)が作られ、老化防止やムチウチなどに利用されている。日本でも入手できるので、これを求めてもよい。

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