最高の機能性食品・漬物栄養学
アツアツごはんに味噌汁、漬物。やっぱりこれが最高のごちそう、という人も多い。漬物は古くから、その土地の季節の野菜の保存法として発達し、毎日の食卓に欠かせないものだった。一時は減塩志向によってノットヘルシーと思われがちだったものの、保存技術の進歩や配送システムの充実によって低塩化が可能となり、いまや最強の健康食品と老若男女問わず人気を集めているのだ。
「一汁一菜」の日本型食事とともに漬物の健康性が見直されている。実はビタミンも豊富(表参照)、食物繊維もたっぷりとれる漬物は、野菜の最良の調理法といわれる。さらに漬物の発酵により生まれる乳酸菌は腸内細菌の調整効果があり、便秘やがんを防ぐことも証明されている。食べ物に健康性を織り込んだ機能性食品、漬物こそ長年にわたり日本人の健康を維持してきた「機能性食品」といえる。
梅干しのクエン酸が細菌性の食あたりに著しい効果があることは、昔から日本人の間に知れ渡っているとおり。漬物には酢酸やクエン酸などの各種有機酸も含まれている。有機酸は胃腸内の酸度を調節して胃腸の働きを活発にしてくれるとともに、体内のエネルギー代謝を促進。エネルギー代謝がスムーズに行われれば、疲労回復や病後の回復などに効果がある。
また、漬物の漬け込み過程で、乳酸菌が発生する。乳酸菌といえば、まず思い浮かぶのがヨーグルト。ヨーグルトは腸の調子を整えて様々な病気を予防する健康食品として注目され、世界の長寿地域でも常食されている。漬物もヨーグルトと同様、腸内のビフィズス菌など有用細菌の繁殖を助けるといった整腸作用や殺菌作用があることが、医学的に証明されている。
漬物にはいくつかの優れた機能性が知られている。野菜を漬物にすることによって野菜の固形分は濃縮され、野菜本来の栄養素の摂取が容易になるとともに、糖などから移行するビタミンや発酵過程で生じる乳酸、酢酸、それにクエン酸などの有機酸が有効に利用される点が挙げられる。
漬物にはセルロース、ヘミセルロース、リグニン、ペクチンといった食物繊維が豊富に含まれている。漬物の摂取量自体は少ないが、食物繊維が野菜の三倍に濃縮されていることから食物繊維の摂取の上で漬物の果たす役割はきわめて大きい。食物繊維は消化されないため、消化管を素通りするだけではあるが、素通りする過程で生活習慣病を防ぐ様々な作用を発揮する。
とりわけペクチンは、コレステロールの吸収を抑制し、結果的に糖尿病、高コレステロール血しょうなどの予防に役立つ。高血圧の原因となるナトリウムに対しても、ペクチンはイオン交換反応により腸管への吸収を阻止することも知られている。
漬物といえば、あの歯ごたえも楽しみの一つ。硬いものをよく噛むことで脳の血流量が増しボケを防ぐという報告もある。そしゃくによるダイエット効果も期待できる。
飽食の時代、お金をかけて食べ疲れしている現代人が、心の底から求めるおふくろの味。漬物にはそんな癒しの力もあるかもしれない。全日本漬物協同組合連合会常任顧問の小川敏夫さんは「機能性食品に限らず、あらゆる食品は“両刃の剣”であり、同一食品のみを大量に長期間食べることは栄養バランスの上からも病気予防の上からも好ましくありません。漬物も他の食品と十分調和させることが健康効果を上げる食べ方です」と語っている。