日本のアンコが北京を席巻

2000.02.10 53号 16面

力士が四股を踏む姿に富士山の絵のパッケージ。中身はにこやかな七福神の顔。どう見ても東京名物としか思えないこの典型的な人形焼きがいま、中国は北京で大ウケしている。人気の秘密は、「日本」や「江戸」文化の珍しさだけではないらしい。全く新しい「あんこ」の味と健康性、これが今回の人形焼きブレイクの理由だ。

私たちには当たり前の和菓子のあんこの風味・触覚は、実は食の歴史五〇〇〇年の国の人たちには初体験のものだったのだ。中国のあんこ菓子といえば、日本人の私たちは各地の中華街で売られている「月餅」を思い浮かべる。中国のお菓子を日本でアレンジし創作した物だが、基本的に中国のあんこ菓子に入っているのはあの「油あん」。油で炒めて砂糖をたくさん入れるために、これをおやつに食べるとたくさんの油分・糖度を一緒に取ることになる。テイスト的にもかなりハードだ。

油あんを食べ慣れた中国の人が初めて日本のあんこを見ても、最初は何だか分からないらしい。最近の中国の雑誌で氷あずきを食べた人の感想として「どちらかというとジャムのようにも見える。箸ですくうと粘りがあり、品質はきめ細かく、口に入れるとすぐ溶ける」「口当たりはまるでチョコレートを食べているかのようなおいしさだ」と、記されている。

あんこの原料である小豆の栄養価は非常に高く、タンパク質はコメの三倍、カルシウム、ビタミンB1・B2、リン、カリウム、無機塩、食物繊維などもバランス良く豊富に含まれており、脂肪は非常に少ない。特に注目すべきは食物繊維で、これが胃や腸の消化運動を活発にして便秘を防ぎ、コレステロールの排除や大腸がんの予防にも効果を発揮する。若さと美しさを保つ成分、サポニンも含有する。その結果、小豆には、「炎症を取り除く解毒作用」「婦人病改善」など薬理的効果もあるとされる。

現在、中国では小豆のそうした作用が流布され、日本のあんこ菓子は小豆の有効性をフルに生かした「病気、肥満、渇きを癒す健康上、良いもの」として、認知された。

「医食同源」の本家本元の国で大歓迎された日本のヘルシーフード、もっと私たちの食卓でも見直して、大いに取り入れていきたい。最近では、保存がしやすい便利なパック製品も登場している。いつもの朝のトースト、今週は定番のジャムをお休みして、世界に誇る日本のあんこを使ってみるのはどうだろうか。

写真のあん商品に関する問い合わせは、東京国際貿易(03・3574・6961)まで。

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