ダインドクター食医・寇&林:第4回「湿気病」
これからの季節、梅雨に入ると毎日、雨々。「手がこわばり、腰や身体は重だるい。食欲は出てこない。そうなると気持ちも暗くなってすっきりしない」、そんな症状を訴える人も出てきます。また胃腸が弱い人は下痢しやすく、リューマチの持病がある人は関節痛が激しくなります。問題が多発する湿気が多い梅雨の季節にどう対応したらいいのか、どんな薬膳料理を食べたらよいのか紹介します。
中医学では、過度な湿気により体内に生じた病理的な水分を「湿邪」といいます。その湿邪には三つの特徴があるのです。
まず、湿邪が存在すると身体が重い感じがします。湿邪に侵された部位に沈重感を伴う症状が現れやすいのです。例えば手足のむくみや手のこわばり、下肢の重だるさ、頭の重さ、神経痛などの症状です。
次に、湿邪には粘りけがあります。汗はジトジトし、皮膚はジメジメと痒みを伴い、分泌物が多くなります。大便はベトベトし、女性の場合はおりものが多くなります。これらの症状は雨の日や湿気の多い日により出やすくなります。
三つ目に、湿邪には消化器を損傷しやすいという特徴があります。湿邪が体内に留まると、消化器の働きを妨げます。このため食欲が落ち、お腹がつかえ、むかつくのです。
湿邪は定着性が高いので、いったん身体が侵されるとなかなか取り除きにくいのです。だからこそ毎日のケア、食事の摂り方が大切です。
梅雨の季節は、湿気にさらされないように注意するのが基本です。生活環境を一定の湿度に保ち、乾燥させるよう心がけます。肌を清潔に保つことも重要です。湿気が多いと細菌が繁殖しやすいからです。
精神面では安定してウツ気分にならないようにすること。適度のスポーツに励み、心安らぐ人たちとのコミュニケーションの時間を持ちましょう。
食物では脂っこいもの、甘いものを控えめにし、さっぱりしたものを食べましょう。
1「体表の湿」のタイプ
<症状>頭が締めつけられるように痛む。風邪を繰り返しひき、すっきりしない。身体が重だるい。皮膚はジメジメし、食欲は低下する。
○メニューとしては
「ヨクイニン魚粥」
○中成薬としては
「勝湿顆粒」
「ヨクイニン」は民間でいうハトムギ。湿を除く性質があるが、味が良く食べやすい。ヨクイニン魚粥もおいしくて効能としては、皮膚・体表の湿を取り去り、美顔・美肌の働きを持つ。
梅雨時の風邪はなかなか治しにくい。しかも胃腸症状も併発しやすい。その場合、「勝湿顆粒」を用いると良い効果を発揮する。勝湿顆粒の中にはカッコウ、クジンなど香りの良い生薬が入っているが、これらが体表の湿を取り除き、半夏、神曲などとともに胃腸も整える。
2「関節の湿」のタイプ
<症状>手がこわばる。手足がむくむ。四肢のしびれ、関節痛、特にヒザが腫れ痛む。筋肉痛、肩こり、首こり、腰痛がある。身体が動かしにくいなど。
○メニューとしては
「ヨクイニン魚粥」
○お茶としては
「シベリア人参茶」
○健康食品としては
「益宝(イーパオ)」
リューマチは風湿病ともいわれる。つまりリューマチの関節症は湿邪と深くかかわっている。ヨクイニンは関節痛の湿も取り去る。「シベリア人参」は関節を強化する。「益宝」はヨクイニンに食用蟻を加えたもの。関節痛、しびれ、筋肉痛、むくみなどに効果的。
3「体内の湿」のタイプ
上腹部が重苦しい。腹が張り食欲がない。身体全体がだるい。口が粘り、顔色は黄色でツヤがない。大便は軟らかく臭いが強い。
○メニューとしては「茯苓煎餅」
○お茶としては
「五行草茶」「三仙茶」
○中成薬としては「星火健胃錠」
湿邪が長く溜まると体内の消化器に入り、消化器の機能を低下させる。消化機能が低下すれば湿気はますますたまりやすくなり悪循環になる。これに対しては消化機能を強化しながら湿を取り除くのが肝要だ。消化不良には食積(腸に溜まった不消化物)を除く三仙茶がお勧め。五行草(スベリヒユ)は抗菌力があるため、細菌性の下痢に昔から用いられてきた。
「茯苓」は菌核類の一種で、胃腸を丈夫にする名薬。茯苓煎餅は宮廷薬膳として歴代の皇帝に好まれた。本草経によると、「茯苓を長く食べると身体が軽くなる」。茯苓をベースとして白求、党参など健胃薬、縮砂、木香など良い香りの醒胃薬を加えた中成薬が「星火健胃錠」。体内の湿気を除いて食欲を出し、胃腸の機能をよく改善していく。
食医・李時珍国医研究所所長 寇華勝(こう・かしょう)