百歳への招待「長寿の源」食材を追う:なつめ
なつめ(棗)はクロウメモドキ科の落葉小喬木である。原産はアジアから南ヨーロッパにかけての広い地域で、
非常に古くから食用とされてきた。インドではお釈迦様が薬果として用いることを人に教えたとの記録も見られる。商品的には紅棗・蜜棗・黒棗・南棗・酸棗などに大別され、品質的には河北産・山東産・山西産が優良とされている。
紅棗は別名大棗と呼ばれるほど粒が大きい。漢方薬として、また健康食品としても優れた特性を持ち、中国では重要視されている。薬用価値は高く補中益気・滋補・潤心肺・緩陽血・悦顔色などの効用があり、特に高齢者が一日三回食べていると顔色が良くなり益寿の効、大としている。また漢方薬に併用されるのは、強力薬に対して、その刺激をやわらげ、緩和して長時間かけて吸収させる作用があるから。服薬過多で胃腸のまいっている人には格好の食べ物といえよう。江南の人々は歳暮として贈る習慣がある。血虚の人には、よく煮て汁を飲み、果肉を食べると生血補血食となる。
「神農本草経」では上品とされ、養脾・胃虚の人には良いとされている。昔の道家は仙品として取り扱っていた。今日はストレスからくる胃酸過多が多く、潰瘍の人が増えているが紅棗を食べると胃酸を制し、血液の酸化を防ぐので緩和性の強壮剤として喜ばれている。
酸棗は薬用効果が高く、酸棗湯にするとき甘草・知母などの漢方薬と一緒に配合する。心労で不眠の人に効果が大きい。また酸棗比仁は強壮と鎮静によく、精神不安からくる不眠を治すという。貧血の人は乾して皮が黒くなった黒棗(ヘイツオウ)を酒に漬けて棗酒を作り、毎日少しずつ飲むと補血の効果が大きい。ノイローゼにもよく効く。
棗はビタミンCを含み防がん・抗がん作用が大きく、高血圧の予防と治療に効果的であり、心血管の疾病によいとする。血糖値もよく下げる。また女性の更年期の発熱や出汗を抑え、心神の安定に向く。高年齢者にとって、スワンナイや胡麻・蜂蜜と並ぶ益寿食品としている。
棗類は薬効ばかりでなく、
健康に資する食品として重視されている。紅棗を原料として、棗あん(棗泥=ツオウニイ)をつくるが、小豆あんよりも風味が高い。このあんが中国北部では甘いあんの第一位で包子や月餅などの甜点心(甘い菓子)に多用される。果糖が多く含まれ、上品でさっぱりとした自然の甘さである。
そのほか紅棗は数多くの材料に利用される。
●棗茶…古来から中国の皇室で親しまれてきた。ほのかに甘い味わいがある
●棗餅…棗を蒸して粳米粉と混ぜ餅状にする
●芝麻棗…棗あんと白玉粉を丸め揚げる
●棗粽子…棗入りのちまき。五月の節句に
●蜜棗…棗を糖水で煮て乾燥させたもの
棗は薬剤であり優れた食材ともいえよう。