百歳への招待「長寿の源」食材を追う:南天

2000.12.10 64号 11面

南天は日本、中国を原産とするメギ科の常緑性低木である。極めてポピュラーな植物であるが、薬効は高く漢方薬にも取り入れられている。

最近は食品としても流通している。

日本では関東以西に自生、中国では河北・山東・湖北・浙江・江西・広東・広西・雲南・四川など各省にみられ、一般に温暖な地を好む。一部には野生化したものもみられる。

木の高さは二~三メートルに達し、幹は地上から数本、多いものは数十本も直上して株をつくる。幹が竹に似ているので中国では南天竹とも呼んでいる。

昔から進物用の赤飯などの上に南天の葉をのせて配る風習がみられる。これは南天の葉の成分が食べ物の腐敗を防ぐので、食中毒の心配がないとされているからである。また床柱や額の材料として江戸時代にも用いられている。京都の金閣寺の茶室「夕佳亭」の床柱は有名で南天巨木を使用。そのほか長寿箸として南天材の土産品もみられる。

南天は漢方薬として実・葉・根・茎が利用され、薬効が高いと評価されてきたが、現在その成分が解明され、道理にかなった使用法であったことが判明した。

南天の効用としては、目を明らかにし、髪を黒くし、肌熱を解し、肝火を清し、血を活し、滞を散ずるとあり、薬効は広範囲である。

成分をみると、実はドメスチン(ナンテンニン)と呼ばれるアルカロイドで苦味があり、呼吸中枢をはじめ興奮させたのち、マヒさせる作用を持つ。これが鎮咳作用となる。

昔からせき止めの薬、特に百日ぜきやぜんそくの薬として用いられていた。現在ではこの特効を生かして南天のど飴が誕生した。根皮や茎にも同じようなアルカロイドが含まれ、葉にはアセトン・シアネイト・タンニンなどが含まれている。タンニンには消炎・制菌作用がみられる。

南天酒も手軽な利用法で、生薬南天実二〇〇グラム、蜂蜜二〇〇グラム、ホワイトリカー一・八リットルを用意。二カ月間冷暗所で漬け込む、せきやたんの抑制によく、特効として、ぜんそく・百日ぜき、そのほかのインフルエンザやせきやたんに苦しむときに効果的。

南天実は止咳・清肝・明目(そこひ)・治久咳・百日ぜき・マラリアなどによいとされる。このため民間薬として広く愛用されている。南天実を五~一〇粒ぐらい飲むとよい。また葉一〇グラムを三六〇㏄の水で半分に煎じ一日三回服用する南天実と同じような効果がみられる。また外用として局部の洗浄用にも使用される。

南天竹根は9月から10月にかけて採取した根で内服(煎用)・外用ともによく、駆熱・清熱肺熱ほかに効く。日本以上に中国は高く評価し、利用している。

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