自由時間術:“利き油”に挑戦!オリーブオイルの飲み比べ
イタリアには利き酒ならぬ、“利き油”士(テイスター)がいる。イタリアで「OLIO(オイル)」といえば、オリーブオイル。現在イタリア国内だけで三〇〇〇種以上が作られているが、地方や製法によりそれぞれ味が違う。最近日本でも種類が豊富に揃うようになった。ナッツに似た風味を持つもの、さらりとした味のもの、後味がピリッとするものなど、いろいろ試飲して、自分の好みを探ってみようというテイスティング講座が開かれた。
講師は、イタリア産オリーブオイルに魅せられ、ついには直輸入販売まで始めてしまった中村由紀子さん。テイスティングの評価方法としては、“色を見る”“嗅ぐ”“器に注ぎ、手であたためて香りを出す”などのやり方がある。同講座では実際に生野菜やパンにつけて味見もした(おいしくてついつい食べ過ぎてしまった!)。
「まずはじめは、イタリア南部・リグーリア産の『ソンマリーヴァ』というオイルです。一六世紀からのフラントイオ(オリーブ圧搾所)を継ぐソンマリーヴァ家が、地中海の温暖な気候とアルプスからの冷たい風に育まれたオリーブで作った伝統の逸品。海沿いの土地柄らしく白身魚のカルパッチョや魚介のサラダによく合います」。“フルーティーな油”という表現が理解できた。レモンやクルミの産地でもあり、それらとの相性も抜群だという。
二番目は、世界的にも有名なトスカーナ産の『ポッジオ・アリオーゾ』。ん、たしかに、同じオリーブオイルながらこんなに味が違うものか! 後味がピリッとする。「それは新鮮さの証。酸度は〇・一三と大変低く、肉やキノコ、ハーブ・煮込み料理に向きます」。
対照的に、三番目に登場した『プロビオス(ウンブリア産)』は実にさらりとクセがない。「これは改良を重ね、管理の行き届いた土壌で育ったオリーブの実を丁寧に低温圧搾した品。香りと味のバランスがよく、肉・魚・野菜と幅広く使え、揚げ物がカラッと仕上がります」 。
この日は結局、七種類のオリーブオイルを試飲。正直言ってすべての違いが分かったわけではないが、風味や香りの差は体感できた。それに大量に飲んでも気持ち悪さがない。
だいたい“油を飲む”というのは日本人にはない感覚だ。「多くの植物油は大豆・コーン・菜種・ゴマなどの種を加工して作りますが、オリーブオイルは熟したオリーブの果実を搾った、いわばオリーブのジュース。しかもエキストラバージン(EV)オリーブオイルは収穫後二四時間のうちに作るので新鮮そのもの。搾りたてのフルーティーな味と香りが楽しめます」。
食事で日常的にオリーブオイルを取っている地中海沿岸地方では動脈硬化や心筋梗塞にかかる人が少ないといわれる。またEVオリーブオイルはオリーブの実を搾っただけで未精製のため、身体に有効な成分が多く溶け込んでおり、ビタミンA・B群・E、身体の酸化を防ぐポリフェノールも豊富に含む。
そもそも中村さんがオリーブオイルの虜になったきっかけは、イタリア留学での自炊経験から。ただサラダにかけただけで、ゆでた豆やイモに、肉や魚料理にかけただけで、どうしてこんなにおいしくなるんだと感動したという。以来、少量しか生産していない農家など各地のオリーブオイル生産者を訪ね歩き、「こんなに大切に育てられ丁寧に作られたオリーブオイルを、ぜひ日本に紹介したい」と生産者に直談判。とうとう今年3月から直輸入・インターネット販売を始めた。「自分の足で歩いて、目で舌で確かめた逸品ばかり扱っています。搾りたてのおいしさを、ぜひ味わってみてください」。
▽問い合わせ=(株)テクノヨコハマ/食品部ルナ・エ・ソーレ 045・972・1066、URL=www.luna-e-sole.co.jp