おはしで防ぐ現代病:レモンと動脈硬化予防

2001.05.10 69号 14面

飛行機に長時間座っていると太股の裏側の静脈に小さな血の固まりができ、これが血流に乗って動脈をつまらせる“エコノミークラス症候群”がクローズアップされ、血流により起こる不調がより身近な話題となりつつある。

日本人の死因の一番にあげられる心疾患や脳血管疾患などの「血管障害」だが、食生活や生活環境を整えれば、ある程度改善できることが分かっている。レモンと健康にかかわる研究を続けている(株)ポッカコーポレーションでは、茨城キリスト教大学生活科学部の板倉弘重教授と共同研究により、このほどレモン果汁を摂取すれば、体内の抗酸化力が向上することを確認した。

血管系疾患は主に動脈硬化から誘発されるといわれている。一般に「動脈硬化」とは頸動脈や大動脈など動脈の内側が厚くなり、硬くなって血液の通り道が狭くなった状態(粥状硬化)をさす。

動脈硬化との関係で注目されているのが、「悪玉(LDL)コレステロール」と、「善玉(HDL)コレステロール」。HDLコレステロールは血管壁内にたまったコレステロールを再び回収し、肝臓へ運ぶ働きをもつ。LDLコレステロールは、血液によって体内に運ばれ細胞に取り込まれる。取り込まれなかった分は、血液中に残ったまま体内を巡回し、活性酸素と出合うと酸化LDLに形を変え、これが血管壁内に染み込んでたまっていき、動脈硬化を引き起こすことになる。

活性酸素の発生・活動の抑制がつまり動脈硬化予防につながる。レモンの成分・ビタミンCやエリオシトリン(レモンポリフェノール)などの抗酸化物質は、自らが酸化されることにより活性酸素の活動を抑え、さらにクエン酸は、血液中の鉄を“カニのはさみ”のように包み込む“キレート作用”によって活性酸素の発生を抑えると考えられる。

鉄分は活性酸素を生みやすい物質。血液中の鉄分と酸素が出合うと二つある酸素分子の結合が外れ、一つは酸化鉄に、一つは活性酸素になる。しかしクエン酸があれば、鉄分が酸素と出合う前にキレート作用で鉄分を包み込んでしまうため、酸素分子は鉄分と結合できない。結果として活性酸素の発生を抑制すると推測されている。

レモンの抗酸化力を調べるために、被験者六名(男性)に一二時間の絶食後、五〇%濃度のレモン果汁六〇ミリリットルを飲んでもらい、摂取前と摂取後一時間・三時間の血液中に含まれるビタミンEの量を測定した。ビタミンEはレモンに含まれていない抗酸化物質のため、レモン摂取後に血液中の量を測定すればレモンの抗酸化力を測ることができる。

摂取後一時間のビタミンE残存量は全員が摂取前を上回っており、その平均向上率は一五・八%という数値を示した。レモン果汁の成分がビタミンEの代わりに酸化を防いだと考えられる。

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