百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「ふかひれ」
今回は中国の最抗老食を2点セレクト。ふかひれ、つばめの巣とも存在はよく知られているが、知れば知るほど奥が深く、貴重さを納得できる。
(食品評論家・太木光一)
ふかひれは中国で四大海味(なまこ、あわび、魚の浮袋、ふかひれ)の中で最高の美味とされている。料理用の文献に出てくるのは明代の半ばで、インド洋でとれた魚翅を永楽帝に献上しているのがはじめ。江戸時代にはひそかに中国に輸出されていたようである。
中国では広東・福建・浙江省などでもとれるが量的にはごくわずかで、主産地はマレーシア、インドネシア、フィリピンなど、日本やアメリカなどから輸入している。
日本で使われている商品はアオザメ、ネズミザメ、ヨシキリザメ、サカタザメなど。特にアオザメが最高である。一尾のサメから背びれ一枚、尾びれ二枚、胸びれ二枚の計五枚がとれる。この中で尾びれが最上品となる。
そして色相によって白翅(パイチー)と黒翅(ヘイチー)に二分されるが、白色のものが珍重される。また製法によって生で干したものを青翅(テンチー)または鳥翅(ウーチー)、煮てから干したものを堆翅(ツイチー)と呼ぶ。軟骨だけを干し固めたものを光翅(コワンチー)と呼び別にしている。
品質面では烏勾(ウーコー)とか大牙検尾翅(ターヤチェンウエチー)が最高である。最近アフリカで獲れるサメはひれの翅針がなめらかで柔らかく、針が太いので喜ばれている。
ふかひれは美味食品の代表として世界的に需要が強く、供給体制がこれに伴わず価格に高値が続いている。相場の中心は香港市場で今後も供給面の不安のため安値期待は無理。
調理法は微温湯に一晩ひたし、皮や砂を落とし、とろ火で三時間ぐらい煮る。さらに水にとり肉質部をていねいに取る。調理の際、臭みをとるためねぎやつぶししょうが、白酒、ラードなどとともに水から煮て、火にかけたり、おろしたりしながら、水をたし柔らかになるまで煮る。種類によっては四日ぐらい要するものもある。最近では即席用に金翅とよばれるものが出廻っている。
ふかひれは無味・無色・無臭の製品となり、これを調理するのが腕のみせどころだ。老鶏・老鴨・火腿(中国ハム)ほかが使われる。
代表的なメニューでは魚翅湯(ふかひれスープ)、通天魚翅(ふかひれの姿煮)、蟹黄魚翅(かにの卵入りふかひれスープ)、抱黄魚翅(卵とふかひれの炒め)ほか数十種。皇帝菜として鳳尾魚翅(ふかのひれの煮込みと鳩の卵のせ)など。
ふかひれのスープにとろみをつけるのにくわいのでんぷんを使用する。中国では魚翅を使った料理は最上とされ、宴席にふかひれが出ると全員が起立して乾盃するほどである。
この人気者の主成分はたんぱく質で八三・四%も含まれている。カルシウムも多い方である。老化予防に効くコンドロイチンが含まれており、常用すれば老化した皮膚に活力を蘇らせる力となる。さらに最近では制癌作用の成分もあるといわれてファンを喜ばせている。
健康食として最高で食べやすく美味。価格のやや高いのが欠点といえるが、漢方薬にみる効用の慈養、養肺、老防の効果から美味な薬食と思って愛用すればよい。