おはしで治す現代病:「脱毛症」犯人はストレス、肩こり

1996.04.10 7号 18面

“ロンゲ”といわれる男の子の長髪スタイルが大流行する一方で、現代社会ではストレスによる円形脱毛症、ホルモンのアンバランスによる壮年性脱毛症が深刻な現代病となっている。東洋・西洋医学に心理療法をプラスした独自の療法により難治性の脱毛症をも治すと有名な永野医院の永野剛造先生にうかがった。

髪には五~六年の成長期があり、次に休止期となり抜けていくという毛周期(ヘアサイクル)がある。全部で一〇万本ある頭髪は、毎日一〇〇本ずつ抜け変わるのが普通。脱毛症とはそれが三〇〇~一〇〇〇本、ひどければ二~三日で全部なくなってしまう異常脱毛状態のことをいう。年齢相応に脱毛していくのは生理的な現象だが、若いうちにどんどん抜けてしまうのが壮年性脱毛症(若はげ)だ。

もともと男性に多いのだが、最近では女性が社会に進出してストレスを受けることが原因でホルモンのバランスが崩れ、閉経期以前の若い女性にも男性型の壮年性脱毛が増えている。

◆“円形”増える

ある日突然発見されるのが円形脱毛症。小さく丸いはげがぽんぽんと二~三個あるくらいならあまり心配はない。三ヵ月くらい皮膚科の薬を塗っておけば大体治ってくる。しかし地図状になったり全部抜けてしまったりと重症になると薬だけでは治りにくくなり、治療が遅れると難治性となってしまう。

円形脱毛症の皮膚の組織を見ると、毛根の部分に、最近エイズの話などでよくいわれるリンパ球というのがバッと出てきていて、毛根をこわしているのがわかる。

このことから円形脱毛症は一般的には自己免疫性が原因といわれるが、そこにはストレスが大きく関係する。

ストレスとは、ある外的な条件(ストレス因子)と、その人の受け止め方のバランスの関係。

たとえば何かに直面した時、乗り切ってそれをバネにもっと強くなっていく人もあれば、それにつぶされてしまう人もいる。今、親の過干渉で対処能力の未発達な一〇歳くらいの子供の円形脱毛症が非常に多いという。

だから円形脱毛症の場合は薬だけでなく、こういう心的要因をも加味した治療が必要なのだ。

ストレスやそれによるホルモンバランスの崩れなどが内的要因だが、身体的なものとして壮年性脱毛症と円形脱毛症の両方に共通した原因の約九〇%として挙げられるのが実は肩こりだ。

頭部には血管が左右三本ずつ六本あり、この六本の動脈が最終的に一〇万個に細かく枝分かれし栄養を供給している。肩こりがあるのは交感神経が過剰に働いている証拠で、血管がぎゅっと締められてしまうため栄養不足になり毛が細くなったり脱毛に通じてくるのだ。

◆ワカメの真偽

よく海草類や根菜を食べると毛が増えるといわれるがはたして本当だろうか。ヒジキやワカメは一個一個で独立して生きている生命体だから、それ一つに必要な栄養素がバランスよく含まれている。

また、大根やゴボウなどの野菜の根っこのものはこれから生命を繁殖させていくための要素を全部もっているのでやはりバランスがよい。

◆日常の心がけ

つまりとくに髪の毛のためにはこれ、という食べ物はなく、要はバランスの問題。一つの食品に限定せずたくさんのものを規則正しく食べ、睡眠をとり、身体のバランスがよくなる方向に食生活・日常生活をもっていくことが、髪の毛の栄養を保つことにもなるのだ。

●育毛作戦・ヒント集

育毛剤は、そのほとんどが血管を拡張させる薬で唐辛子や生姜などいろいろ入っている。髪の毛母細胞というところは毛細血管によって栄養が供給されているので、そこへいく血液を増やそうという考え方だから、つけてマッサージするのは悪くない。

シャンプーは脂性の人は毎日洗って結構だが、そうでない人は一日おきくらいが髪のためにはいいのでは。整髪料をたくさん使う人は、すぐ細菌が繁殖してくるのでマメに洗うべき。

マッサージは、ごしごしとこするようにすると毛を傷めるので、指先を地肌にあて、頭の皮膚をぐっぐっと頭頂部に向かってもちあげるように動かす。頭はぐるっと一周ツボだらけなので、指圧効果もあり体全体の活性化にもつながる。

円形脱毛症は程度にもよるが、多くは皮膚科の薬をつけるだけで十分治る。しかし重症で心の問題がありそうだなと思ったら、脱毛の専門医に相談すべき。ストレスは自分自身では気がつかぬことが多いし、他人にうちあけやすい病気でないためさらにストレスをためこむことになるからだ。

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