自由時間術:小型ヨット「テーザー」の醍醐味
移動性の高気圧が張り出して、乾いた南風が心地よい5月から6月、「ヨット乗り」にとって一年で最も快適なシーズンがやってきた。海水のしぶきはミネラルとマイナスイオンが豊富で、セーリングによるリフレッシュ効果も期待できる。またヨットは生涯スポーツとして高齢になっても長く親しめる側面もあるという。小型ヨット「テーザー」を楽しんでいる人たちに、その醍醐味を取材した。
セーリングウエアが進歩したおかけで夏でも冬でも一年中海のスポーツを楽しめるようになってきたといっても、快適なヨット日和というのはそれほど多くあるものではない。やはりいまの季節が、自然のままで最高の気分を味わえる時期なのだ。
学生時代から始めてヨット歴三〇年の本吉譲治さんは日本を代表するセーラーの一人で、海外でのレース経験も豊富なベテラン。様々な種類のヨットを乗り継いできた本吉さんが現在はまっているのが全長四・五メートルの二人乗りの小型ヨット「テーザー」だ。軽くて車の上に積めるので、本拠地の神奈川県・葉山だけでなく毎年夏には猪苗代湖や浜名湖に持って行けるのが魅力という。一緒に乗る高校二年生の息子の夏樹君も最近めきめき腕を上げ、一昨年浜名湖で行われた世界選手権大会では親子で三位入賞を果たした。今年は8月にイギリスで行われる大会に日本代表として参加予定だ。
大阪で同じテーザーを楽しむ多田幸男さんと入村じゅん子さんは、二人合わせた合計年齢が一〇〇歳。グランドマスタークラスでは国内でかなう者がなく、若手を含めたオープンクラスでも常に上位に入る大ベテランだ。入村さんは整体術の心得もあり、日頃から身体をベストな状態に保つノウハウもレースに生かしている。
現役のテーザークラスのヨット乗り日本最高齢は、七四歳の安原実郎さん。世界選手権連続出場回数七回と最多の現役レーサーでもある。自由時間がたくさんとれるようになった会社引退後は、さらに拍車がかかったように毎週のように海に出ているという。
ヨットは敷居が高くてお金のかかるぜいたくな遊びというイメージがあるが、テーザークラスならオーストラリア製の新品でも一〇〇万円、中古なら三〇万円。国産の中古艇ならもっと安く、時にはネット掲示板に「差し上げます」という案内まで出ることがある。自分のヨットを持つこと自体はそれほどお金のかかるものではないのだ。
ただし厳しい自然相手の海のスポーツだから、気象の知識や操船術、体力が必要。定年を前にヨット教室で少しずつ勉強をはじめる熟年者も結構いる。一人で海に出るより仲間と一緒に帆走する方が危険度が減るだけでなく楽しさも倍増する。
風だけで動くヨットは最も自然を感じさせてくれる乗り物。風向きの変化や強弱でスピードが大きく変化するし、風に向かって走ったり、風より速く走ることもできる不思議さがある。奥が深くてのめり込む人も多い。
東京近郊では千葉市稲毛ヨットハーバーで、初心者を対象に毎月ヨット教室が開催されている。生涯スポーツとしてチャレンジしてみては。
問い合わせ先=043・279・1160 http://chibacity.spo-sin.or.jp/top.html