ヘルシー企業の顔:名古屋製酪・日比孝吉代表取締役社長
報恩感謝の精神で、五〇歳以上の希望者全員に無臭にんにくを無料で届ける活動を実施、一二年目の昨年11月、ついに目標の一〇万人配布を達成した名古屋製酪(株)の日比孝吉社長。にんにく成分アホエンの研究では世界トップレベルのバイオ研究所を有し、万人の健康に尽くす数々の活動を続けている。新たに二〇万人の目標を掲げ躍進中の日比社長に、その道程と今後を聞いた。(聞き手=日本食糧新聞社代表取締役会長 伊奈一郎)
◆健康願う無償の奉仕
伊奈 このたびは、無臭にんにく『蓬莱』の無料配布が一〇万人を達成されたとのこと、まことにおめでとうございます。その間には幾多のお喜び、そしてご苦労もあったことでしょう。
日比 そうですね、確かに一〇万人と目標を立てたものの、なかなか思うように進まない時期もありました。数年前、どうやっても五万人くらいで停滞していた頃、友だちに「もう、にんにく配るの、止めたらどうだ」と言われたんです。ある企業の社長室に行ったら、このにんにくが山と積んであるのを見た。もったいないからもう止めた方がいいと忠告してくれたんですね。
けれどその企業からはいつもちゃんと礼状が届くし、勝手にストップするわけにもいかない。何とか工夫しなければ、と思案の結果、当社バイオ研究所が発見した数々のアホエンの効果を分かりやすくまとめた資料を発表しました。すると皆さんがその威力を見直され、あっという間に一〇万人を超えた次第です。食品はその情報とともに伝わってこそ、人は支持して下さるという好例ですね。
伊奈 この事業はユーザーからお金をもらわない、全くの無料配布という形で展開されています。私もいつも『蓬莱』を送っていただき恐縮なんですが、一〇万人分ともなると、原料代・製造代など、大変なご負担でしょう。
日比 実際私どもでは分野違いで「薬のようなものを扱う」のは難しいんです。それなら、お得意さんへのサービスとして健康管理をさせていただこうと、波動の測定とこの無臭にんにくのお届けを始めたわけです。社会奉仕というと大げさですが、この活動が会社にとってのよい宣伝にもなると考えています。
◆つきあいで飲み始めたら…
伊奈 そもそも無臭にんにくにかかわったきっかけは何だったんですか?
日比 ある方のご紹介で無臭にんにくをいただき、おつきあいのつもりで飲み始めたんです。すると夜中、目が覚めずにぐっすり眠れるようになり、すこぶる調子が良い。それで知り合いにも勧めてみたんです。
当時、息子の友だちのお母さんで、大変痩せて病弱で、薬を飲まなければおしっこも出ないと言っていた方も、いまや嘘のようにぴんぴんにお元気です。
それから家内のお袋が、もうかなりの年齢ですが、無臭にんにくを飲み出したら、これまた大変元気になりまして。高野山へ行ったりディズニーランドへ行ったり、あちこち走り回るようになったんです。
「こいつはすごいぞ。なんとか当社で扱うことはできないか」と社の者に相談してみたところ、「当社で扱う『スジャータ』などは乳製品で、にんにくとはイメージが合わない」と反対に合いました。でも一方で「これからは高齢社会だから、安全・安心な健康に貢献できるものを作ることは価値のあることだ」という意見もあったもので、無臭にんにくの製法を買って、本格的に研究をスタートさせたわけです。
◆どうして臭いが消えた?
伊奈 あの強烈な臭いがどうやったら消えるのか、不思議です。
日比 実は原理はいたって簡単。にんにくのエキスは油の膜で包めば臭わない、ということなんです。さらににんにくを無臭にする作業中に『アホエン』という物質が発生します。それこそがにんにくパワーの源である、ということが当社のバイオ研究所によって次々に解明されています。
最初研究員から報告を受けたときは「何? アホ?」とチンプンカンプンでしたよ。調べてみるとなんと、巷の“にんにくの薬”にはそのアホエンが含まれていない。そんなムシのいい話があるか、他社製品にはない逸品がうちの製品にだけ存在するなんてと、調査を続けたところ、製法に違いがあることが分かったんです。
他社さんはにんにくを無臭加工した後、雑菌を殺すために熱加工するんですね。ところがうちは、乳製品を扱う食品メーカーですから無菌加工は得意中の得意。そのノウハウを生かして火を入れずに無臭にんにくを作れるので、有効成分のアホエンも生きたままにできるというわけなんです。さらに現在アホエンを増やす方法を研究中です。従来品の倍の効力を持つものが開発できたら、これまでの半分の量で済むようになります。
伊奈 アホエンは痴呆症にも効果があることが分かったそうですが、今後の痴呆症治療に革命的な薬の開発も可能かもしれませんね。
日比 そうです。アホエンの効果については、痴呆症・がん予防・肝臓保護など公に発表している項目に加え、うつ病・白内障などさらに三〇項目の実験が進行しています。
伊奈 それはすごい。にんにくが身体にいいということは周知の事実なだけに、大学などの研究機関では掘り尽くしたテーマと嫌われるそうですよ。
◆健康長寿へあくなき研究
日比 さらに研究の余地はある。アホエンの力は未知数です。糖尿病・痴呆症・がん…まだ他の病気で困る方のお役に立つことができるのではと思っています。
『蓬莱』の名は、秦の始皇帝が求めた不老長寿の仙薬をイメージしてつけたものです。まさにアホエンの解明は、人類の夢・不老長寿に一歩一歩近づく研究なのです。
伊奈 私自身『蓬莱』ファンとして今後一層心して飲ませていただき、百歳元気を目指したいと思います。
日比 ええ。私の夢も、百寿。百歳現役です。道元さんの「人間に定年はない。死ぬまで現役である」との言葉のようにね。この『蓬莱』を通じて皆さんとともに健康長寿を目指したいと願っております。
伊奈 日比社長さんは、常に感動し感謝する心を持っておられる。そしてその感動を決して独り占めになさらず周りに惜しげなく伝えて、分かち合おうとなさる。
日比 それはいつしか自分に跳ね返って自身の力になるんです。私の尊敬する松下幸之助さんはこうおっしゃっています。「人間というものは、人の運命を変えただけしか、自分の運命は変わらない」。人のために尽くしたことは、その大きさの分だけ自分に跳ね返ってきて、自らを生かすパワーに変わるのです。
ですから報恩感謝は大切です。恩とは根。根にほどこせば枝葉は茂る、と私は信じております。
◇プロフィル
日比孝吉(ひび・たかよし)
1928年6月2日生。静岡県出身。46年名古屋市立第一工業卒業後、父とともに商いを始め、52年名古屋製酪(株)設立、71年代表取締役社長就任。グループ会社も多数設立、99年には(株)きくのIFCを設立し現在に至る。