百歳への招待「長寿の源」食材を追う:アサツキ
アサツキとワケギはともにユリ科の多年草。このユリ科はニンニク、ニラ、ラッキョウを始めチャイブ、エシャロット、リーキなど優れものの多い家族である。アサツキとワケギは古い時代から愛用され成分的にも優れている。薬効の高いスタミナ食としてファンは多い。価格面でも比較的安く今後も成長が期待されよう。
(食品評論家・太木光一)
アサツキの歴史は古く、平安時代にはもう食用とされていた記録もみられる。葉の色がワケギよりも浅い緑色であるため浅つ葱(き)の名前が生まれたと思われる。源氏物語にも浅葱(あさぎ)という色のことが出ている。
北海道・本州・四国の高冷地の草原や中部地方以北の海岸にも自生している。春間近くなったころ、八百屋やスーパーの店先に並ぶアサツキをみて、都会に住む人はそれが野山に自生している植物とは思わないであろう。
アサツキは数多い日本ネギの仲間のうち、茎が最も細く、別名はイトネギ。地中にラッキョウに似た鱗茎が固まっている。春早く鱗茎から新緑色の細長い柱形の葉を伸ばす。小ネギに似て高さは二〇~三〇センチほどに成長。店先で売っているものは高級な山菜の部類に入る。もともとは野生であったが、栽培ものが急増している。しかし味の面では野外のものが香りも強くコクがある。
採取は三月ごろから初夏まで。また秋の茎も食用となるが、夏と冬は採取できない。鱗茎そのものは充実し周年食べることができる。春の摘み草を楽しむころにとれたものは、葉の色がネギよりも明るく、味の面でも濃厚で野趣が豊かである。
成分に優れ、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富で、カルシウム、鉄などもバランス良く含まれている。
優れた食品としてだけでなく、薬用効果も期待されよう。またネギやワケギと同様に身体を温め血行もよくする。刺激性成分の硫化アリルはビタミンB1と結合して吸収をよくするばかりでなく、消化液の分泌を盛んにし、消化を助ける働きがみられる。また健胃整腸にもよい。
生で食べてよく、辛味も弱く香りもおだやか。煮物や冷やっこ・湯豆腐の薬味によく合い、味を高めよう。
薬味とは料理に添えて味覚を刺激し、食欲を増進させる香辛料のことで、単味の豆腐を引き立てる作用もする。
刻みアサツキは最もよく合うものといえよう。鍋物やそばの薬味にしてもよい。
鱗茎は皮をむき、ヌタなどの和え物に向く。葉は適度に切りサッとゆでる。アオヤギを酢洗いして、アサツキとともに酢みそで和える。このほか鱗茎を生のまま、みそをつけて食べると初夏のピリッとした辛さが楽しめる。
また焼いて食べたり炒めても食べるが、細かく切って葉とともに薬味に混ぜる以外に、ラッキョウのように甘酢に漬けてもうまい。
6~7月にはつぼみも摘む。花とつぼみを軽くゆがくが、おひたし、和え物、天ぷらにしたり、油炒めもよい。また地方によっては3月3日の雛祭りにゆでたアサツキとアサリのむき身を酢みそで和えたアサツキなますをつくる風習もみられる。
アサツキは伝統の味であるが、巧みに使うことで料理が生きてくる。料理のバラエティーが広く、手軽で美味。薬効面からも、もっと利用したい山菜といえよう。