百歳になってもボケないゾ(2)「趣味は囲碁に」ボケなし
「百歳になっても頭脳明晰」。これは決して夢の話ではない。きんさん・ぎんさんをみてもわかるように、年をとったからといって、誰でも必ずボケるというものではありません。人間の知能、右脳を高齢になってもよい形で維持するための方法について、大蔵省病院・折茂肇院長に伺った。
人間の脳は生きている間に約一〇%しか使われていないといわれている。残りの九〇%はムダになっているのだ。この部分を意識し働かせることで、右脳を活性化し、「ボケ防止」に役立つのではないかという期待がもたれている。
人は日常、左脳を使って生活している。左脳は言葉を話すことのほか計算、知覚、認識、思考、判断、記憶、想像‐‐などの働きを担っていると考えられているからだ。その一方、右脳は感覚や空間の認識、さらには音楽や絵画などの芸術など総合的な判断力を必要とする作業分野を担っている。簡単にいえば、コンピューターで解析できる分野が左脳、できないのが右脳というわけだ。そこで、最近「右脳の活性化」がボケ防止に役に立つと注目されている。右脳に刺激を与え、活性化する趣味を持つことが大切なのだ。
前述した音楽などのほかに、書道や描画、人付き合いなどが挙げられる。その中でとくに折茂氏が注目しているのが「囲碁」。
先日、チェスの世界チャンピオンがコンピューターと勝負して、一回負けたことが報じられたことは記憶に新しい。しかし囲碁のコンピューターの実力はトップレベルからはほど遠い、アマチュア五級程度。囲碁はチェスと違ってコンピューターの到達できない可能性を秘めているようだ。なぜなら囲碁は計算力や暗記力だけで打つのではなく、感覚的にとらえる部分が非常に多いから。つまり、右脳が深く関わっているゲームなのだ。
最近話題の将棋の羽生善治七冠王二五歳だ。左脳をおもに使う将棋の棋士のピークは二〇代であるといわれる。では、囲碁の棋士のピークはいつだろうか。囲碁界最高位の棋聖のタイトルを持っている趙治勲は三九歳、名人の武宮正樹は四三歳だ。アマチュアでは七〇歳で囲碁を覚え、八五歳の現在三段で打っている女性や、九六歳の現在も一人で囲碁教室にやってきて楽しんでいる男性なども存在する。囲碁は年齢に関係なくどんどん強くなれる。
これは、囲碁には最善手がわからない場面が多く、いろいろなアプローチの方法(いわゆる棋風)があり、過程を楽しむ余裕があるという特徴を持つゲームであるからだといえよう。
現在囲碁は脳卒中や脳血栓など脳の機能に障害をきたした病気のリハビリの一環として注目されており、事例も多数報告されている。(浜松医療センター脳神経外科・金子満雄氏ら「脳と神経」など)。
趣味を持つこと自体、好きなこと、楽しいことをやるので、β・エンドロフィンというホルモンが脳内に出ることによってボケに対する抵抗効果が生まれるとベストセラーの「脳内革命」(春山茂雄著)で述べていることにもつながる。