百歳への招待「長寿の源」食材を追う:エビスグサ
エビスグサとナルコユリはともに有用な漢方薬材として知られているが、前者はハブ茶として、後者はおいしい山菜として有名。比較的手軽に栽培もできる。ともに薬効の広さと高さに驚かされる。日常の生活に利用をおすすめする。
(食品評論家・太木光一)
エビスグサは北アメリカ原産の一年草でマメ科の植物。アジア各地でも栽培され、日本には一八世紀ごろ渡来した。日本での呼び名は多く、一番有名なのはハブ茶。ロッカクソウ・イシャタオシ・イシャイラズ・ドクナシほかがある。
エビスグサの茎は菱形で直立し、高さ〇・七~一メートルほど。8~9月ごろ茎頂に近い葉腋に黄色い五弁花をつけ、花後、細長くてインゲン豆状の曲がったサヤに種子をつける。種子は黒色で、中国ではこれを「沢明子(チュミンズ)」と呼ぶ。沢明とは目によく視力が強くなることを意味する。子とは実のことである。中国全域で栽培され、良品のとれるのは安徽・広西・四川・浙江省など。
エビスグサは漢方的薬効と、茶やコーヒーの代わりに飲まれるハブ茶としての二つの効用がみられる。漢方薬としての利用は広く、清肝・明目・利水・便通・熱赤眼・高血圧・肝炎・習慣的便秘などに効果的。肝臓病によく効くので、慢性肝炎の人はしばらく飲み続けると効果が出てくる。また血圧の降下作用も強く、毎日二グラム(生薬)を飲み続けるとよい。また沢明子の名前のごとく、あらゆる眼病の特効薬として期待されよう。このほか漢方として緩下・利尿薬として便通を整え、利尿をよくする。貴重な良薬として広く愛用されている。
またハブ茶の効用は、少し人気の高まってきた緑茶やウーロン茶に負けるものではない。長い伝統のもとに証明されファンも多い。最近の言葉を借りれば、(1)無糖飲料でノーエネルギー(2)自然飲料でヘルシー(3)常飲しても飽きることがない(4)便秘にも効果的(5)胃腸病や糖尿病にもよく成人病にもよい(6)視力を回復する良薬(7)しかも極めて安価‐‐と一石数鳥の効果が期待され、健康志向の現代によくマッチしている。
ハブ茶は焙じて飲むと一段と風味を増しコーヒーの代用となる。頑固な便秘症には少し深く煮出してから飲むとよい。自然飲料であるから副作用は全くない。
エビスグサには前述の通り、アメリカ産と中国産があり、どちらも形態はよく似て、しかも利用目的も薬効もほぼ同じである。種子の成分はともにアントラキノン誘導体で、健胃・利尿・便秘などの作用に優れている。自家栽培も容易であるが、欠点として原産地が暖地のため、やや耐寒性が弱い。露地でつくると、サヤが成熟する前に寒さがきて収穫ができなくなる。温室での栽培が無難。しかし価値ある保健飲料である。