ようこそ医薬・バイオ室へ:旬のアスパラガスは天然のドリンク剤

2002.05.10 81号 6面

少し下品な話題で失礼する。大リーグの名選手であったベーブルースが、あるパーティーで、目の前にあったアスパラガスのサラダを静かに押しやったので、「お嫌いですか」と聞くと、ベーブルースは「アスパラガスを食べると小水が臭くなるんですよ」といったという。

アスパラガスを食べるとオシッコが臭くなる現象は、一八九一年にすでにドイツで発表されていて、その後この臭い成分が硫黄を含むメルカプタンという二種類の物質であることも報告されている。メルカプタンはいわゆる卵の腐った臭いというやつで、どうもアスパラガスを食べると消化の過程でこのメルカプタンを生成する人々がいるらしい。これは一種の代謝異常で、一つの遺伝子の突然変異によるものといわれ、文献によっては約二〇%とか、四〇%とか載っていて、外国では多いようである。私の周りではあまり聞かないが、ネット検索すると「悩み相談」にも載っていた。日本人には数が少なそうである。

ところで、アスパラガスであるが、これからが旬の季節で、毎年北海道の極太のアスパラガスが送られてくるのを楽しみにしている。その名前は「たくさん分かれる」とか「激しく裂ける」というギリシャ語から由来している。

栄養的にはタンパク質と糖質が比較的多いのが特徴の野菜で、特にタンパク質を構成するアミノ酸の中ではアスパラギンとアスパラギン酸が多い。このアスパラギンは初めて天然物中から発見されたアミノ酸として知られていて、フランスの化学者ボグランとロビゲは一八〇六年にアスパラガスの芽の抽出物から、アミノ酸を結晶として取り出すことに成功し、アスパラガスにちなんでアスパラギンと命名されている。

最近はホワイトアスパラよりもグリーンの方が主流になっているのは栄養面を考えてのことであろう。ホワイトはフランスやドイツで食されていたためにかつては人気があったが、ビタミンCがある程度で、グリーンの方はそれ以外にビタミンA、B1、B2、カルシウム、鉄分、ニコチン酸を含み、さらにアスパラギン酸やムチン、亜鉛などのミネラルもあって、栄養の宝庫である。特にグリーンアスパラに含まれるアスパラギン酸が、体内でエネルギー代謝や窒素代謝を高めることにより体内にたまった乳酸などの疲労物質が取り除かれ、肩こり解消や疲労回復に即効性を発揮する。コマーシャルでマッスルに似た人が「一本いっとく?」といっているドリンク剤の主成分がこれである。

また、アスパラギン酸が尿の合成を促進させて不要なアンモニアを体外に排出することで中枢神経が守られ、イライラや不眠などが解消できたり、肌荒れや貧血にもいいらしい。

そして、グリーンアスパラの穂先に含まれるルチン(ソバにも多いポリフェノール)が、毛細血管の弾力性を高め、血行をよくして高血圧を予防する。血行促進作用によって冷え性も改善されるという。

わが家では、きっとこれからグリーンアスパラを食べるたびに、妻が「一本いっとく?」というに違いない。

((株)ジャパンエナジー医薬・バイオ事業部 高橋清)

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