自由時間術:収穫の秋「農家レストラン」で究極のスローフードを

2002.10.10 86号 5面

農村地域において自然と親しみ、地域の人々との交流を図るグリーンツーリズム。その関心への高まりとともに、東北地方で「農家レストラン」のオープンが相次いでいる。県産業経済部が「みやぎの農漁家レストランガイドブック」を発行するほどのブームになっている宮城県を見てみよう。

農家レストランは、のれんや看板がなければ一見「普通の民家?」と見過ごしてしまうような構えが多い。築何百年の米蔵が、そのまま使われていたりするからビックリだ。

「いにしえの館・たてのいえ」(宮城県名取市大曲中小路二六、電話022・385・1908)もそんな店舗の一つ。江戸中期に建てられた県の重要文化財の屋敷で、伝統的な農家料理・創作料理を提供する。使用する食材は自家産の野菜や、地域で採れた旬の農産物。野菜のうま味を味わえるよう、味付けは極力薄味、だし汁はコブや煮干しを使って手作り。目の前のいろりで焼かれる焼き魚は水揚げされたばかりの鮮魚。食後、屋敷の歴史話が聞けるのも楽しみだ。食と空間の両面から農家を体験できる。

夫婦で完全無農薬野菜を栽培して二〇年、一〇〇種類もの野菜は市場には出荷せず、直接消費者に宅配してきたが、「さらに多くの人に無農薬野菜のおいしさを伝えたい」としてオープンしたのが「秋保ベジ太倶楽部・農家レストラン」(仙台市太白区秋保町馬場字深野三八、電話022・399・5020)だ。「あれもこれも食べていただきたくて」と、メニューはなんと一〇品以上。野菜はすべて自家産の朝採り。卵は自家で飼育する鶏たちが産み落とす有精卵。肉はこの鶏を使う。豆腐も手作り。一食でいいただける野菜の量がとにかく多いのが嬉しい。

最後に、これからの季節お勧めの宮城の野菜を二つ紹介。一つは「曲がりネギ」。地下水位が高く深掘りできないので、栽培途中に一度土から抜き斜めに植え直すことで、曲がって育った部分の甘みが増す。柔らかくとろみも極上。10月以降が特においしくなるという。もう一つは寒さに強いホウレンソウの性質を生かした「寒じめちぢみホウレンソウ」。菊の御紋のように開いた形が特徴。上に伸びず地面に平行して育つため、冬場は畑を除雪してから収穫する。両手におさまる大きさで甘みが強い。これは12月から味わえる。

深まりゆく秋の風景を眺めながら、ゆっくりと究極のスローフードのうま味を堪能しに、週末、足を伸ばしてはいかが。

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