Going My Own Lifeがんと生きる:岩手県・千葉恵子さん
大好きなママの腕に抱かれてご機嫌の人なつっこい珠(かける)君。四二八六グラムの立派な健康体で昨年12月に生まれた。幸せな母子の肖像以外には見えないが、実はこの笑顔のママはいま、自分に襲いかかった状況と懸命に闘っている。千葉恵子さん(岩手県岩手郡松尾村)、三二歳にして七人の子供の母。それだけでもいまの世の中では珍しく、たくさんの責任を抱えているはずだが、千葉さんが背負っているのはそれら幸せの重みだけではない。この若さで子宮頸がんとともに生きているのだ。
体調の変化に気づいたのは三年半前、二八歳の春だった。何だか調子が悪くておなかが痛い。六人の子を持つ母子家庭ママは昼夜働いていたから、最初はあまりの忙しさからくる疲労だと思った。個人病院に行ったがすぐ大病院で検査する必要があると言われた。結果は子宮頸がんのステージ4のA、それも限りなくBに近いAだった。親も呼び出されたが、「母はすぐに泣いてしまうタイプなので、自分で今後の話を聞きました」。
親の前では泣けない。一七歳で男子を出産して以来昨夏に次女を生むまで、年子も含め六人の子供を産んできた。すべて自分の意志で全うしてきた人生だ。六月に手術。「全摘を勧められたけれど、抵抗があった。まだ二八歳。子供を産める能力は残しておきたくて」。状況を見て再手術も考えなくてはならないと告げられた。人間ドックでは肝臓が良くないとも言われた。進行しているので転移を診ていたようだ。仕事・家事・通院、千葉さんは頑張った。けれどそうしたキツイ日々の中で、段々病院に通うことが苦痛になってきた。「家のことだけでも大変。病気と生きることが日常になると、通院どころではなくなって。正直に言えば、現場で抗がん治療で髪の毛が抜けていく人を見たりするとこちらの元気もなくなってしまう。どうせ死ぬのなら、家と職場にいた方がいいなって」。覚悟を決めたのだ。
それでも胃がおかしくて食べられないのは困る。だるさもなんとかしたいと、中国漢方の薬局に通うことにした。造血作用があるという「婦宝当帰膠」、血のめぐりを良くするという「田七人参茶」を勧められた。しばらくしてさらに、がんに卓効を示すという「シベリア霊芝」の粉を飲み始めた。シベリア地方で生きたシラカバにのみ寄生する貴重な物で、旧ソ連政府の厳重な管理で海外流出しなかったのが、ここにきて日本にも入ってきたのだという。「よく分からないけれど、何か頼れそうな気がした」。
ごく普通の日常生活を通した。魚と野菜を中心に食べ物に気をつかうこと、なるべく明るいことを考えて前向きに過ごすこと、そして信頼している漢方薬。「それ以外の特別なことは何もできません。毎日おコメを一升炊く生活をしているので…」。
たくましい生活は、たくましい生命力を育むのか。手術から二年八カ月後の三一歳の2月、新しい出会いの中で千葉さんはまた体調の変化を感じた。妊娠したのだ。生みたいと強く思った。
がんはまだ、身体の中にある。けれどステージは1に小さくなっている。大切なのはどうなっているかではない。そこでどう生きるかだ。生き方は、現実の絶対的な現象さえ変える。珠君の存在がその証明だ。
◆シベリア霊芝
霊芝とシラカバの特性を合わせ持つ。
がんに対しては、漢方でいうお血(血の滞り)や気滞(気の滞り)、痰湿(不用な水分)、毒熱(発熱性の病毒素)などの病邪を取り除く働きと、がんによる体力の衰えを補う働きがある。免疫促進作用によって自然治癒力を高めたり、苦痛を軽減して気分を明るくする作用も期待できる。抽出成分には、フラボノイド・トリテルペノイド・イノシトール・アガリチン酸・アルカロイドリグニンや、βグルカンなど多糖類も豊富であることが確認されている。(問い合わせ先=日本中医薬研究会 電話03・3273・8891)