ブラジル発アガリクスのふるさと探訪記 日系人が魂こめた自然露地栽培!

2003.02.10 90号 8面

「ブラジルのピエダーデ地方は、生活習慣病発生率が非常に低い」。この事実から、アメリカの研究者らが、この地に自生する「神のキノコ」の存在を明らかにした。がん・糖尿病・肝炎・高血圧・高脂血症など生活習慣病や、アトピー・肌荒れ・シミなどの新陳代謝低下、風邪をひきやすい・疲れやすい人たちの体質改善にも役立つといわれるアガリクス。近年その薬効は、予防医学・代替医療でも積極的に取り入れられるようになった。βグルカンはじめ、抗酸化物質のポリフェノール・ビタミン・ミネラル・食物繊維・アミノ酸など、免疫力を高める有効成分がずば抜けて多く含まれるアガリクスは、どのような土地で生まれ、どのように育つのか。ブラジル在住の日本人ジャーナリスト・細川多美子さんから届いたフレッシュなルポを紹介する。

アガリクスはいまや世界各地で生産され、さまざまな栽培方法も開発されている。そこでいまいちど基本に返り、自然の真実に目を向けようと、アガリクスの原産地ピエダーデの土地と人脈に明るいブラジル薬草健康会の上原清助代表に案内を頼み、現地を訪ねた。

サンパウロの街の喧騒をあとに、数百年前まではインディオたちが平和に暮らしていた海岸山脈へ向け一〇〇キロあまり。ブラジル国内で有数の山岳地帯の延長線上、標高一〇〇〇メートルに達する高原にピエダーデの町が開ける。肌に突き刺さる日差しは驚くほど強烈だ。

朝夕の温度差が大きい高原の気候を利用して、タマネギ・トマト・アーティチョーク・富有柿やイチゴなどが栽培され、ピエダーデは優良産地としてサンパウロの重要な食糧供給地となっている。足元に転がる松ぼっくりの度肝を抜く大きさに太陽のパワーを知る。アガリクスはこんな自然環境の中で発生したキノコ。ここではいまでも天然物が発見され、この気候を最大限に活用した、自然栽培が行われている。

多くのブラジルの農作物同様、ピエダーデのアガリクス栽培も日系人がリードし、町ぐるみで生産向上に努めている。その中心的存在が、上山多喜徳さんら日系一世・二世・三世で構成される九人のプロジェクトチーム。それぞれ自分の畑と、共同実験場があり、菌の培養・堆肥作り・畑の管理など、打ち合わせと実践の格闘を日夜繰り広げている。

四五年前、二一歳で志を固めブラジルへ移民してきた上山さんは、アガリクスに出会ってかれこれ三〇年。当時すでにその効用は地元で評判になっており、万策尽きたという難病の伯父に、半信半疑ながらも飲用させたところ、驚くほどの好結果が出た。さらに数々の症例を見て、他のメンバーもそれぞれ身近に似たような体験をして、自然栽培に着手した。

ハウス栽培は雨風の心配がなく、手間も人手も最小限で、年中収穫することもでき効率がいい。周辺都市にハウス栽培で高い利益をあげた人の話を聞けば心が動かないわけではないが、「商売用のハウスもの、これだけはやりたくないんです。なんだか罰が当たるような気がして」上山さんらは自然栽培にこだわったという。

ブラジルの農業を飛躍的に発展させたのは、こうした日系人だといっても過言ではない。社会の中で確実に信用を築いた日系人は、正直さや誠実さを母国の伝統の一環として次代に引き継いだ。その実直な姿、現代社会から消えつつあるその精神性は、心から信頼の置けるものだ。

誠実に働くことを心がけてきた上山さんだが、重荷に耐えかね「やめようと思ったことも何度かある」という。しかし、利用者の反響は予想以上に大きく、その声が積極的な生産への原動力となり、勇気と責任の源泉となる。切実な願いを受け止め、彼らの心に手抜きは一層許されない。生産者の心意気、哲学が“ピエダーデの誇り”アガリクスを生んでいる。

●細川多美子さんプロフィール

東京都出身、上智大ポルトガル語科卒業。1988年ブラジルのパラナ連邦大学に留学、以来ブラジル在住。現在、サンパウロで日本語情報誌『Bumba』編集長。

◆アガリクスの問い合わせ先

ブラジル薬草健康会

〒533-0033 大阪市東淀川区東中島1-17-5スタジオ新大阪ビル525

電話06-6815-7780 FAX06-6815-7781

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