ヘルシートーク:野菜のパティシエ・柿沢安耶さん

2008.04.10 153号 05面

 野菜スイーツが人気を呼んでいる。その先駆けと言われる「パティスリー ポタジエ」のオーナーシェフ、柿沢安耶さん。多忙な毎日でも元気の秘密は、やはり野菜とお客様の笑顔にあるようで。お話を聞いてみた。

 ◆甘くてキレイ、絶対できる!と

 非日常のおいしい料理ではなくて、毎日食べられて、お客様が元気になって帰ってもらえるようなお店をやりたいとずっと思っていました。例えば便秘や頭痛、ちょっと体調がすぐれない……そんなことが私のお店に来てもらうことで少しでも良い方向に向いてもらえたらなと。

 最初は栃木でベジタリアンのカフェレストランを始めました。ベースにあったのはマクロビオティックの考え方です。飲食の会社に3年勤めた後、勉強して、「あ、これだな」と。野菜を中心にその土地のものを食べること、伝統的な調理法を大切にすることなどをテーマに、現場で農家さんを回りまして。始めてみて、素材の良さというのは料理に直接出るんだなと実感しましたね。本当に塩だけでおいしい野菜がいっぱいあって。野菜の魅力にさらに引き込まれました。

 こんなおいしい野菜、料理だけではもったいないんじゃないかなと思っていたところ、ご要望をいただいたんです。若い男性で彼女のお誕生日にビックリするようなケーキを作ってもらいたいと。張り切って作ったのが、いまお店の定番になっている小松菜のスポンジケーキです。見た目は普通のショートケーキですけれど、切ると緑色。とても喜んでいただけて。「野菜ってスイーツになる!」と確信しました。小松菜もなるくらいだから、他の野菜もきっと。

 野菜自体甘みがありますし、色もキレイ。それぞれ個性がありますので、それを生かすようなケーキが作れるんじゃないかなと。

 ◆本場、パリのフランス料理は…

 大学は仏文科、だからフランスの文化や料理に憧れていました。フランスの空気に触れたくて短期間の留学をしたんですね。春休みを使って、1ヵ月を2回くらいのものですけれど。パリのリッツホテル地下の料理教室で、牛肉の赤ワイン煮のような古典料理を学んで。そこで得た収穫はですね、「ああ、私はフランス料理には向いていないなあ」ということでした(笑)。もともと肉食がそれほど好きではなかったんですね。毛がついたままのウサギをさばくようなことを毎日練習したのですが、これを一生の仕事にしていくのはちょっとツライ。けれどあちらでは料理を習うと、お菓子も一緒にということになりますが、これはとても楽しくて。

 一方で同じ頃、習いに行っていた料理研究家の方の紹介で、お菓子屋さんでアルバイトをしていたのですが、お砂糖やバターをすごい量使うことに驚きました。フランス菓子というのはそういうものだと分かりましたが。食べるのは楽しい、けれど健康という部分では結びつかないなと感じてしまって。

 ◆ゆるやかに、継続できる方法で

 マクロビオティックは素晴らしい考え方ですが、一緒に通っていた同世代の友達からは厳しすぎて続かなかった話をよく聞きました。学んでいる時は頑張ったものの、外食ができなかったり、結婚したらだんなさんが敬遠したとか、いろんな理由がありますが。

 やめてしまうくらいなら、ちょっとゆるくして長く続けたほうが身体にはいいのになと思います。肉も魚も乳製品も卵も工夫して摂りながら玄米中心にするとか。私は自分なりにマクロビオティックを解釈して、いまの時代に合った、続けやすい身体にいい食事を模索してきました。例えば「ポタジエ」のケーキは卵も使ってます。

 いまケーキを食べていただいて、普通にとてもおいしいと言ってくださいました。伝わってすごく嬉しいです。ケーキのお店なのでまずおいしくなくては。それから驚きがあったり、楽しさがあるような、そんなスイーツがいいですね。

 また、人にも環境にもやさしい農業を続けている農家さんの大変さを、産地で見てきました。野菜の消費減少が言われていますが、食事の最後に野菜スイーツを食べることで、少しでもこの問題解決のお役に立てるのではないかなとも思っています。

 ○プロフィル

 かきさわ・あや 1977年、東京生まれ。大学在籍時に料理研究家のもとでフランス料理を学ぶ。「おいしいだけでなく食べた人が健康になる料理」を目指し、ベジタリアンとなる。マクロビオティックのスクールに通うなど、自然食の知識を深め、2003年に栃木でオーガニック野菜レストラン「オーガニックベジカフェ・イヌイ」をオープン。野菜のスイーツが話題となり、2006年には東京・中目黒に野菜スイーツ専門店「パティスリーポタジエ」をオープン。

 パティスリー ポタジエ 東京都・目黒区 電話03・6279・7753 http://www.potager.co.jp/

 ◆最新刊『パティスリー ポタジエのナチュラル野菜スイーツ』(講談社)

 「ポタジエの人気メニューをベースに、ご家庭でおいしく簡単に作ることができるようにアレンジしたレシピ集です」。新感覚のかわいいスイーツが42種も。この本を読者3人にプレゼント。詳細は7面。 ◇プレゼントの応募方法

 ハガキに(1)4月号の感想(2)氏名(3)年齢(4)〒住所(5)電話番号(6)応募の理由を明記し5月15日までに郵送。厳正な抽選の上、当選者を決定し発送をもって発表にかえる。あて先は〒105-0003東京都港区西新橋2-21-2第一南桜ビル 日本食糧新聞社・百歳元気新聞「ナチュラル野菜スイ-ツ」プレゼント係まで。※応募された個人情報については当目的以外には使用しません。

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