ヘルシートーク:漫画家・玖保キリコさん

2009.07.10 168号 05面

 「いまどきのこども」「バケツでごはん」などで有名な玖保キリコさんは、イギリス人のご主人と結婚後、96年からロンドンで暮らしている。この春終了した人気連載の「ヒメママ」(マガジンハウス)もウェブを活用して海の向こうから原稿が送られた。ちょっと里帰りした玖保さんに、いまどきのロンドンお料理事情も含め、グローバルな主婦&漫画家生活をうかがった。

 ◆打ち合わせもメールを活用

 ハムステッドという緑が多い街に住んでいます。広い公園があって、子どもを育てるには良い環境ですね。いま息子は11歳。イギリスでは12歳以下の子どもを家に1人でおいておいてはいけない、法律ではないけれどそういう慣例があって、だから中学生になるまではけっこう手間がかかります。けれど私は通勤して仕事をするわけではないので、ラクをしていますよ。漫画を描くのは、子どもが学校に行った後から夕飯前まで、こぼれたら夕飯の後からまた。いまは家族がいてあまり無茶なスケジュールではできないので、夜なべはしても徹夜はしません。

 渡英直後はネットを使うといっても小さい容量でしか送れなかったのが、いまは本当にいいですね。打ち合わせや校正などもネットで。電話より時差の問題も解決できます。日本の友達も最初の頃はアドレスを持っていない人も多かったけれど、いまは交流に距離は感じません。

 ◆会話もごはんも和洋両方で

 夫も日本語をけっこう話すので、日常会話は英語と両方です。せっかく両親が2つの文化を持っているのだから子どもはバイリンガルにしたいなと、私は日本語、夫は英語担当で接しています。ハーフならば自動的に両方喋るというわけではないです。私が意識的に日本語を喋らないと。ところがあちらで長く暮らしていると、私自身が「それ、pickして」とかまぜこぜの言葉を使ってしまったり。夫に逆に「キチンと!」とチェックを入れられています(笑)。

 ごはんも会話と同じ感じで、和洋両方。ごはんを炊いておみそ汁を作る和食が1週間に1~2回。それ以外はパスタが多いかな。スーパーでいろんな種類の生パスタが簡単に手に入るんです。3~5分で茹で上がるのでとても便利。ソースはトマト系、クリーム系…その日の冷蔵庫の中身で決めます。アンチョビを基本的に常備していて、これとパン粉を組み合わせたメニューは私の定番。テレビ料理番組「THE NAKED CHEF」で有名な、ジェイミー・オリヴァーというシェフが大人気なんですけれど、これは彼のレシピのアレンジです。

 野菜はこまめに買うようにしています。子どもがラタトゥイユが好きなので、よく作りますね。それからフェンネルのバルブ(たまねぎのような球根部分)をお肉を焼く時に一緒に切ってローストするのが好き。やわらかくなってフェンネルの香りがして。イギリスでは、オーブン料理が多いです。

 ◆ヒメママのモデルですか? うふふ

 ヒメママのモデルですか。よく聞かれますが、とくにいません。自分の義理の母とか友達の義理の母とか、友達の父とか、けっこうお年を召すと頑固よね…みたいな話を聞きつつキャラクターができあがった感じです。でも、書いていくうちにだんだん勝手に動き出してきて、自分でも困るなと思いながらも面白いかな、可愛いかなとか思えてきて。自分の身近にいなければ、ですけれど(笑)。ちょっとワガママって、ある意味、健康的ですよね。我慢はしないのでストレスはなさそうだし。

 読んでいただいている方からは、年齢に関係なく、自分の近くにソックリな人いる!みたいなお話をよく聞きます。家かもしれないし、会社かもしれないし、学校かもしれない。ね、いるでしょう。それから誰でも多分、自分の中に、ヒメママ的要素ってあるのではないでしょうか。

 対するお嫁さんのハナさんのキャラは、ずっとけなげな嫁かと思って読んでいたら、けっこうしたたかなの~?って意見もいただきます。ハナさんを見て、「ああ、こうやればいいのかあ」とか。この中で人間観察をして、何かにお役立ていただければ嬉しいです。

 ○プロフィール

 くぼ・きりこ 東京生まれ。漫画家。1996年から家族とともにロンドン在住。代表作に「シニカル・ヒステリー・アワー」(白泉社)、「いまどきのこども」「バケツでごはん」「ちょべりぶ」(以上、小学館)など。「キリコ・ロンドン」「中級キリコ・ロンドン」(以上、角川書店)など、ユーモアに富んだエッセイも発表。ブログも読める公式ホームページ「玖保倉庫」http://www.kubokiri.com/

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