72候を楽しむ漢方スローライフ(57)橘はじめて黄なり
北風に冬の訪れを感じて(小雪末候12月2日~6日ごろ)
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冷たい北風が吹き、橘の実が少しずつ黄色くなる頃。日を追うごとに寒さが増し、気がつけばもうすぐ年の瀬です。一年を締めくくり、新年を迎える準備で何かと慌ただしい12月。時には香りの良いゆず湯などを楽しんで、疲れをゆっくりほぐしましょう。
●「粘膜」を守って冬の風邪予防を
季節はいよいよ冬本番。寒さが本格的になるこれからの時期は、風邪をひきやすくなるので注意が必要です。
中医学(中国の伝統医学)では、風邪の症状は自然界の邪気(風邪、寒邪、熱邪など)が身体に侵入して起こると考えます。こうした邪気を寄せ付けないためには、鼻やのど、胃腸などの粘膜を守って免疫力を高めることが大切です。
乾燥する季節は、まず身体の潤いを養って、鼻やのどと関係の深い「肺」を健やかに保つよう心がけて。日頃のこまめな水分補給、潤いの多い食材選びなどを意識しましょう。
温かい飲食物や消化の良い食事を心がけ、胃腸を守ることも大切。寒い季節は、スープやみそ汁で「胃腸を温める朝ごはん」を習慣にするのもおすすめです。また、生命力の源ともいえる五臓の「腎」を養うことも、強い体質づくりにつながるのでぜひ養生を。腎は加齢とともに衰えるので、高齢の方は特に意識して腎を養うよう心がけましょう。
●風邪をひいたら対処は早めに
風邪をひいてしまったら、症状に合わせて早めに対処を。冬にひきやすいのは、悪寒、薄い鼻水、頭痛などが特徴の「青いかぜ」。ゾクゾクっときたら、身体をしっかり温めて、体内の邪気を早めに発散してしまいましょう。のどの痛みや発熱などを伴う「赤いかぜ」にも要注意。熱っぽさ、のどのイガイガ感などを感じたら、体内の余分な熱を冷ますことが大切です。
食材は、身体を温め邪気を発散するしょうが、青じそ、ねぎ、コリアンダー、肺を潤す梨、はちみつ、胃腸の働きを整える大根、白菜、腎を養う豚肉、えび、ニラなどを。毎日のお茶には、風邪予防の定番「板藍茶」などを取り入れてみましょう。
漢方では、冷えや鼻水の青いかぜに『錠剤葛根湯』、喉の痛みなど、熱症状のある赤いかぜには『イスクラ天津感冒片』などがよく使われます。
監修・包海燕(中医学講師)
◆ハレの日薬膳レシピ:蒸し塩豚の香味野菜巻き
手軽にできるパーティーメニュー
<材料:6人分>
・豚肩ロース肉(かたまり)…500g
・塩 …………………………小さじ2
・ねぎ(白い部分) ………1本分
・しょうが …………………1かけ
・にんじん …………………中1/2本
・かいわれ大根 ……………1パック
・香菜 ………………………1株
・レタス・サラダ菜類 ……適量
*好みの調味料=ゆずこしょう、コチュジャンなど各適量
<作り方>
(1)豚肉は表面の水分をふき取り、塩をまんべんなくすり込みペーパータオルで二重に包む。その上からぴったりとラップをして、冷蔵庫で寝かす(3~4日が食べ頃)。
(2)(1)からラップとペーパータオルを取り、表面を水洗いして水気をふき取る。
(3)蒸気の上がった蒸し器に、オーブン用シートを縁を立ち上げるように敷き、その上に(2)の豚肉をのせ、フタをして弱火で2時間蒸す。粗熱が取れたら5mm厚さの薄切りにする。
(4)ねぎ、しょうが、にんじんは4~5cm長さのせん切り、かいわれ大根は根を切り落として半分に。香菜は根を切ってざく切りにする。
(5)器に(3)の塩豚と(4)の野菜を盛り付ける。塩豚と野菜をレタス・サラダ菜類で巻き、そのまま、または好みの調味料を付けていただく。
レシピ担当:鈴木理恵(国際薬膳師、管理栄養士)
●季節のオススメドリンク:板藍茶(ばんらんちゃ)
この季節の定番茶。マイポットで持ち歩いて。
●ねぎは身体を温め邪気を発散します。
24節気72候は、古代中国で始まった暦が日本でも取り入れられ、風土気候に合わせ明治まで使われていました。日々の中に少しずつ感じられる季節の移ろいを、楽しみましょう。