72候を楽しむ漢方スローライフ(58)雪わたりて麦出づる
雪下の芽吹きに春を待つ(冬至末候 12月31日~1月4日ごろ)
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新年を迎え、心晴れやかな季節。寒さはますます厳しくなりますが、降り積もる雪の下では、麦がひっそりと芽を出し始めます。小さな息吹に春の訪れを待ちわびるこの時期は、乾燥しがちな肌のケアを心がけて。暖かな季節に向けて、潤い素肌を育てましょう。
●「乾燥肌」の原因は体内にも
冬はカサカサ、粉ふきの「乾燥肌」に悩まされる季節。角質層の水分不足などで肌のバリア機能が低下し、かゆみも起こりやすくなります。
中医学(中国の伝統医学)では、肌の潤いは体内の「気(エネルギー)」「血」「津液(身体を潤す水分)」によって養われると考えます。そのため、乾燥する季節に体内の気や血、津液が不足すると、肌はさらに乾燥しやすい状態に。乾燥肌は、放っておくと皮膚病につながることもあるので油断は禁物。身体の内外からしっかり潤いを補って、健やかな素肌を保ちましょう。
●全身スキンケアで保湿力アップ!
保湿ケアのポイントは、全身スキンケアを心がけること。皮膚は全身1枚でつながっている器官です。そのため、顔など一部だけを保湿しても、身体が乾燥していては潤いを逃がしてしまうことに。保湿ローションなどで、全身をしっかり保湿しましょう。内側からの対策は、バランス良く栄養を取り、体内の「気・血・津液」を十分に養うことが基本。潤いを養う食材も積極的に取りましょう。
年代に合ったケアも大切。皮脂の分泌が少ない子どもの肌は、乾燥しやすく刺激にも敏感です。保湿効果の高いクリームやローションで、こまめに全身の保湿を。大人のケアは、特に皮脂の少ない肩、すねなどの保湿を重点的に。保湿剤を手のひらで押さえ込むようになじませ、肌に浸透させることがポイントです。角質層が厚く体内の潤いが肌に届きにくい高齢の人は、血流を良くすることがカギ。外側からの保湿ケアも念入りに。
食材は、潤いを養う長芋、大根、ゆり根、黒ごま、潤いの素を生む「腎」を養う黒豆、栗、血行を促すたまねぎ、ニラ、青魚などを。
健康食品では沙棘果実油をソフトカプセルに詰めた『紅沙棘(ホンサージ)』が、外用では沙棘果実油配合のクリーム『セ・サージ』や『瑞花露(すいかろ)薬用保湿クリーム』などがよく使われます。
監修・楊暁波(中医学講師)
◆ハレの日薬膳レシピ:黒豆と栗のかるかん
潤いを養う長芋&黒豆を使って
<材料:21cmのパウンド型1本分>
・長芋………………150g
・卵白………………1個分
・グラニュー糖……60g
・上新粉……………100g
・水…………………50ml
・黒豆(甘煮)……適量
・栗甘露煮(適当な大きさに切る)………適量
・サラダ油またはオーブン用シート
<作り方>
〔下準備〕型にサラダ油を薄く塗るか、オーブン用シートを敷く。
(1)長芋は皮をむいてすりおろし、水を加えてよくまぜる。
(2)ボウルに卵白を入れて泡立て、5分立てになったら半量のグラニュー糖を加えてまぜる。さらに泡立て、残りのグラニュー糖も加えてしっかりと泡立てる。
(3)(2)に(1)を少しずつ加えてまぜる。
(4)(3)に上新粉を加えてまぜ、型に流し入れて平らにならし、その上の半分に黒豆を、残りの部分に栗を散らす。型の上をアルミホイルで覆ってフタをする。
(5)(4)を蒸気のあがった蒸し器で30分蒸す。
レシピ担当:鈴木理恵(国際薬膳師、管理栄養士)
●季節のオススメドリンク:晶三仙(しょうさんせん)
サンザシの酸味がさわやか
●黒豆は潤いの素を生む「腎」を養います。
24節気72候は、古代中国で始まった暦が日本でも取り入れられ、風土気候に合わせ明治まで使われていました。日々の中に少しずつ感じられる季節の移ろいを、楽しみましょう。