72候を楽しむ漢方スローライフ(60)すごもりの虫戸をひらく
たけのこ入りドライカレー
イスクラ心脾顆粒
野の花が香る頃(啓蟄初候 3月5日~9日頃)
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冬ごもりの虫たちが眠りから覚め、土の中から顔をのぞかせる季節。春の気配に野の花が咲き、人の身体も活発に動き出そうとします。この時期、冬にため込んだものを身体から発散させるには、苦みのある山菜がぴったり。わらびやぜんまい、たけのこなど、旬の味覚を食卓に添えてみましょう。
●血不足が「物忘れ」の原因に
人の名前が思い出せない、言葉がすっと出てこない–日常生活の中で、そんな物忘れに不安や違和感を覚える人は少なくないと思います。
中医学(中国の伝統医学)では、物忘れは脳に栄養を与える「血(けつ)」の不足によって起こると考えます。その主な原因となるのが、五臓の「心(しん)」と「脾(胃腸)」の不調。心は血を全身に送り、脾は食事の栄養から血を生み出しています。そのため、心と脾の働きが弱くなると、心脾両虚(しんぴりょうきょ)となり、脳に十分な血が行き渡らず物忘れが起こりやすくなるのです。身体の老化と深く関わる「腎」の働きの低下も、物忘れの要因の一つ。腎の衰えは老化のさまざまな不調につながるため、高齢の方は日頃から腎を養うよう心がけましょう。
●「心」と「脾」の養生を
物忘れが気になる人は、心や脾の働きが弱くなっていないか、自分の体調を振り返ってみましょう。不眠、不安感、めまいなどは心の不調、疲労感、食欲不振、便秘などは脾の不調のサインです。思い当たる症状があれば、積極的に対処しましょう。
血行不良も脳の血不足につながるので放っておくのは禁物。身体を冷やさない、こまめに身体を動かすなど、生活習慣の改善で血行を良くするよう心がけましょう。
物忘れは不安なものですが、加齢とともに記憶力が落ちるのは自然なこと。過剰なストレスは脳の働きにも影響するため、あまり思い悩まず、気持ちよく毎日を過ごすことも大切です。食事や運動で上手に身体を整えながら、脳を健やかに保つ心がけを。
食材は、心や脾の働きを整えて血を養う米、もち米、肉類、卵、にんじん、いも類、しょうが、百合根、ぶどうなどがおすすめ。
漢方では、心と脾を健やかに保つ『イスクラ心脾顆粒(しんぴかりゅう)』、腎を養う『イスクラ参茸補血丸(さんじょうほけつがん)』などがよく使われます。
監修:秋本佳媛(中医学講師)
◆ハレの日薬膳レシピ:たけのこ入りドライカレー
春の味覚で、冬の間にため込んだものを発散!
<材料・2人分>
・合いびき肉………………………150g
・たけのこ(粗みじん)…………100g
・たまねぎ(みじん切り)………1/2個
・にんじん(みじん切り)………1/2本
・にんにく(みじん切り)………1/2片
・しょうが(みじん切り)………1/2片
・セロリ(みじん切り)…………1/2本
・レーズン…………………………20g
・カレー粉………………大さじ1・1/2
・ガラムマサラ(あれば)……小さじ1
・塩………………………小さじ1/2
A・トマト(缶詰)……1/2缶(200g)
A・トマトケチャップ…大さじ2
A・ウスターソース……小さじ1
A・牛乳…………………1/4カップ
A・水……………………1/2カップ
・サラダ油 ……………大さじ1・1/2
<作り方>
(1)鍋にサラダ油を熱し、にんにく、しょうがを入れて炒める。香りが出てきたら、たまねぎを加え透き通るまで炒め、たけのこ、にんじん、セロリを加えて炒め合わせる。
(2)(1)にひき肉を入れて炒め、肉の色が変わったら、カレー粉、ガラムマサラ、塩を加え、香りが出るまで炒める。
(3)(2)にAを加えて混ぜ、ひと煮立ちしたら弱火にして10分煮込み、最後にレーズンを加えてひと混ぜして火を止める。
(レシピ担当:鈴木理恵(国際薬膳師、管理栄養士))
●季節のオススメドリンク:香菊花(しゃんきくか)
香り高い菊花のお茶。アロマ効果で心身ともリラックス
●しょうがは胃腸の働きを整えます。
24節気72候は、古代中国で始まった暦が日本でも取り入れられ、風土気候に合わせ明治まで使われていました。日々の中に少しずつ感じられる季節の移ろいを、楽しみましょう。