72候を楽しむ漢方スローライフ(91)蟋蟀戸に在り
澄んだ秋空を見上げて
(寒露末候 10月18~22日頃)
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家の戸口から、キリギリスやコオロギの声が聞こえる頃。秋が深まるこの時期は、空気が澄み、すがすがしい青空がどこまでも広がります。スポーツを楽しむもよし、旬の味覚を堪能するもよし、読書にふけるもよし……。秋の楽しみを満喫して、充実した時間を過ごしましょう。
●読書の秋は「疲れ目」に注意
日ごと夜が長くなるこの時期は、時間を忘れて読書にふけったり、映画を見たり……。なにかと目を酷使することも多いのではないでしょうか。
漢方では、目の状態は体内の「血(けつ)」と深く関係していると考えます。血の働きは、全身の組織に栄養や潤いを届けること。そのため、血が不足すると目に十分な栄養や潤いが行き渡らず、眼精疲労やドライアイ、視力の低下などを招いてしまうのです。目のエネルギーとなる「気」の不足や停滞も、疲れ目の要因となるので注意しましょう。
●「気」「血」を養って目を健やかに
疲れ目対策の基本は、目の栄養となる「血」を十分養うこと。めまいや不眠、冷えなどを感じる人は、血不足のサインと考えて積極的にケアしましょう。日頃から疲れを感じやすい人は、しっかり栄養を取って「気」を養うことも心掛けて。気の巡りをスムーズに保つよう、ストレスをためないことも大切です。
暮らしの中で気を付けたいのは、長時間のスマートフォン利用。“読書や映画鑑賞もスマホで”という人も多いと思いますが、目の酷使は血の消耗につながります。疲れ目を悪化させる要因にもなるので、意識して目を休めるよう心掛けましょう。
食材は、気や血を養うにんじん、ほうれん草、セロリ、クコの実、ブルーベリー、鶏肉、レバーなどがおすすめです。
◆ハレの日薬膳レシピ:野菜肉巻き ~クコソース添え~
気と血を補い明目(めいもく)に良い、にんじん、ほうれん草、セロリ、クコの実を使って
<材料・2人分>
・鶏ささみ………3本
・にんじん………30g
・セロリ…………30g
・ほうれん草……40g
・くこの実………20g
・しょうゆ………大さじ1
・オリーブオイル…大さじ1
・セロリの葉(飾り用)…3~5g
<作り方>
(1)鶏のささみを観音開きにして均等の厚さに伸ばす。1.5本のささ身をはぎ合わせて長方形にする。
(2)にんじんはささみの長さで棒状に切り、下ゆでする。1人分3本くらい。
(3)セロリもささみの長さに切り、筋を取って、1人3本くらいの棒状に切っておく。
(4)ほうれん草は青ゆでして、葉先と軸をセットにしてささみの長さに切り、水気を良く絞っておく。
(5)薄く広げたささみに、にんじん、セロリ、ほうれん草をのせ、ぐるりと肉で巻くように包む。ラップで肉を包み(角をきれいに包み込む)、蒸し器で約10分蒸す。
(6)クコの実は30mlの水(分量外)に浸して戻し、水ごとミキサーに入れ、しょうゆ、オリーブオイルを入れて30秒ほどかけてソースにする。
(7)蒸しあがった肉巻きは5~6個に切り、ソースを敷いた皿に切り口が見えるように盛り付け、セロリの葉を飾る。
レシピ=阿部芳子(東京栄養士薬膳研究会)
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24節気72候は、古代中国で始まった暦が日本でも取り入れられ、風土気候に合わせ明治まで使われていました。日々の中に少しずつ感じられる季節の移ろいを、楽しみましょう。