健康食品に大麻使用 タイで商業利用解禁へ
リラックス効果がある大麻の成分を含んだ健康食品や化粧品などがタイで商業販売されることになった。タイ政府が麻薬法の指定区分の変更を行った。これにより、早ければ今年半ばごろにも同成分を含有した製品が市場に展開される見通しだ。成分抽出工場の認可申請やファンド組成の構想が持ち上がるなど、早くも新市場に向けた動きも活発化している。
指定区分の見直しは1月末に行われた。保健省食品医薬品委員会(FDA)によると、これまで医療用などに限定利用を認めていた「第5種麻薬」の大麻について、葉と茎、幹、根を指定から除外することを決定。この結果、これら部位を使った商業利用が可能となった。ただし、種子と花については成分を多量に含むことから引き続き指定の対象となり、個人としての大麻の栽培もこれまで通り禁止される。
利用は当面、医薬品や健康食品、化粧品などに限定される見通しだが、個人や法人でも登録をすれば自由に大麻成分を含んだ製品の製造や販売、輸出を行うことができるようになる。登録はFDAの事務所や各県の保健窓口で受け付ける。初めての本格解禁となることから、保健省は教育省と協力して適切な利用に向けた研修サービスも実施する考えだ。
こうした動きに企業各社も関心を向けている。栄養ドリンク大手のカラバオ・グループはリラックス効果を前面に出した新製品の販売準備を開始。給油所大手PTGエナジー傘下のパンタイ・コーヒーも新製品の開発を進めている。一方、栄養補助食品を生産するDODバイオテックは大麻成分の抽出工場を大学などと協力して新設する考えで、認可申請に向けた準備を開始した。また、銀行など金融界では、潜在的な市場が期待できると投資信託(ファンド)の組成に向けた検討も行われている。今後、市場が整備され安定的な供給ができるようになれば、投資家の関心も膨らむものと読む。
タイでは古来、伝統薬としての大麻の利用が行われてきた。数万種があるとされるハーブの一つという位置付けで、医療や健康、美容などに活用されてきた。しかし近年になって、麻薬の汚染がひどくなったことから法律で一般の利用が制限されていた。
大麻成分の商業利用が進んだ背景の一つに、一昨年に発足した現政権の存在が挙げられる。連立与党第3党としてキャスチングボートを握る「プームヂャイタイ党」が選挙戦で大麻の自由化を公約に。同党は2000年代半ばまで政権を担った旧タクシン派政権に所属した地方の有力政治家らが結成、産業界に強い影響力を持つ。解禁にはこうした事情もあったとされる。
(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)