家庭用こめ油、“万能”で規模拡大 100億円台、完全視野
家庭用食用油の“万能選手”である、こめ油が規模を拡大している。健康価値を契機に年々増加してきた中、今春も内食需要の増加を背景に大伸長を記録。「揚げる」「炒める」などの加熱用途に加え、スイーツ作りや生食用途も拡大している。米ぬか原料ならではの国産自給型としての認知も徐々に高めており、大手フルラインメーカーも強化の構えを本格化するなど、隙がない。数年前まで“マイナー”ジャンルだった同市場だが、19年は80億円に肉薄。“メジャー”化の指標といえる100億円台が完全に視野に入った。=関連記事7面(村岡直樹)
家庭用食用油の国内市場規模1500億円強のうち、100億円を超えるのはオリーブ油、キャノーラ油、ごま油の3大分野に、生食が主流のアマニ油が近年加わったのみ。こめ油は10年前、5億円前後の規模で安定推移していた分野であり、一躍注目株に躍り出た。
成長要因は健康価値に加え、油酔いやベタつきの少なさ、癖の無さによる汎用(はんよう)性、かけ油でも活用される食感向上、米ぬかを原料とする国産自給型–など多岐にわたる、最大の特性はこれらを包括する“万能選手”としての地位だろう。“スタンダードで少しプレミアムな単一油種”という、ありそうでなかったポジションは伸びしろにもつながり、認知率・購入率の低さと相まって、急激な規模拡大を誘発したといえる。
特需を抜きにしても、今秋は成長要因が並ぶ。専業大手・ボーソー油脂の昭和産業グループ入りは特に販路面で相乗効果が確実で、新シリーズ誕生の可能性も。最大手・築野食品工業はこめ油では希少なTVCM投下に加え、オンラインニーズに対応するWeb戦略を進めるなど、多角的なマーケティングを本格化する。いずれもかつては見られなかった活性策であり、潜在需要開拓の可能性は十分。日清オイリオグループやJ-オイルミルズなどフルラインメーカーもラインアップを近年拡充しており、売場は拡大確実だ。