北海道ラーメン特集

◆北海道ラーメン特集:長引くコロナ禍で厳しさ増す

外食 2021.07.14 12261号 08面
夜間の売上げ激減に知恵絞り対応(札幌市内ラーメン店)

夜間の売上げ激減に知恵絞り対応(札幌市内ラーメン店)

テーマパークなどは利用客激減で苦戦

テーマパークなどは利用客激減で苦戦

北海道ラーメン業界の復権を祈りたい(にぎわいを見せていたテーマパーク内店舗)

北海道ラーメン業界の復権を祈りたい(にぎわいを見せていたテーマパーク内店舗)

 長引く新型コロナウイルス禍、度重なる緊急事態宣言発令やまん延防止等重点措置の実施で断続的に営業時間短縮やアルコール類提供自粛、休業要請など余儀なくされ、全道に2000軒はあるとされるラーメン店の多くが客数減、売上げ減に苦しんでいる。特に外出自粛や時短要請で夜間の売上げが激減、開店時間を前倒ししたり、デリバリーやテークアウト需要取り込みなどの戦略を打って各店は生き残りに懸命だ。(長島秀雄)

 道内ラーメン店事情について、ある業務用製麺業者は「新型コロナ感染拡大以降、ラーメン店の新規参入や撤退・閉店に極端な増減はないが、昨年1年間で見ると業務用ラーメン市場はおそらく3割程度は落ち込んでいる」と窮状を訴える。中でもテーマパークやショッピングセンター内フードコート、空港内、都心部に構える店舗など中心に、人流の変化やインバウンド、観光客需要の激減で影響は甚大。長期休業や撤退、閉店に追い込まれる店も出ているという。

 また、米国やアジア圏など中心に海外店舗を構えるラーメン店、海外に生産拠点を構えたり、海外店舗に輸出する業務用製麺業者も厳しさを増している。

 一方で、近隣住民やサラリーマンの胃袋を支える郊外立地の路面店は昨年、新型コロナで急減した反動もあっておおむね落ち着いた動きを取り戻しつつあるようだ。「弟子屈ラーメン」を展開するエフビーエスは「普段、三井アウトレット内の北広島店に通って食べてくれていた人が、施設自体の休館や時短のため、札幌郊外の手稲店や発寒店を訪れ、食べに来てくれるファンも多い」と、常連客の根強いブランド人気に支えられる店も少なくない。

 緊急事態宣言に伴う時短要請で、ススキノなど歓楽街のラーメン店では開店時間を前倒ししたり、深夜帯から昼営業への営業時間切り替えや、酔客中心から家族連れを新たなターゲットに据えて集客を図るなど新型コロナ対応を模索。デリバリーサービスやテークアウトに活路を見いだすラーメン店も増え、各店は営業存続に知恵を絞る。

 「北海道らーめん奥原流 久楽」を展開するアップグレードは、店舗駐車場を利用した屋台風テークアウト事業にチャレンジ。昨年開業した千歳店駐車スペースを活用して、焼き鳥やハンバーガーのテークアウト販売をはじめる計画だ。

 「175。DENO担担麺」を展開する175は昨年10月、冷凍車両を用いた移動販売事業を立ち上げ、自社商品や道内有名飲食店メニューの冷凍食品を売り込んでいる。エフビーエスも4月、札幌発寒店をセカンドブランドとして立ち上げた「RAMAT(ラマッ)発寒店」(アイヌ語で「魂」「命」の意)にリニューアル、既成概念にとらわれない「新しい麺料理」提案で話題を集めるほか、市内4店舗で始めたデリバリー事業は10ヵ月で2000万円の売上げにつなげている。

 今年業界で注目されたのは、「味の時計台」を展開する道内ラーメンチェーン大手の時計台観光が昨年10月に外食やゲーム関連事業を手掛けるトイダック(神奈川県)に運営譲渡し、主力とする横浜家系ラーメン「魂心家」の道内本格展開を始めた動き。「東雁来魂心家」を皮切りに、味の時計台直営店からの業態転換で横浜家系ラーメンの存在感を高めていくとみられる。道民や観光客からも人気を集める道産子の定番ラーメンだった「味の時計台」の今後の動向に関心が集まっている。

 今年もしばらく続く気配のコロナ禍、ある店主は「ラーメン業界自体は、いわれるほど疲弊はしていない。ラーメン店は個人経営が多く、外出は減ったが近所のラーメン店ぐらいには食べに行く人も多い。夜間売上げが減り堅調とはいわないが、それほど大きく落ち込んでもいない」と言い切る。確かに、北海道は誰もが認めるラーメン王国であることが地盤にある。道民に最もポピュラーな麺メニューであり、そばやうどんなど、ほかの麺類に比べ個性が強く、多様性と奥深さが人々を引きつける。動物系や魚介系、煮干し系などスープ、トッピング、麺の種類も豊富で、味やバリエーションの広さはラーメンファンの数だけ好みがあり、作り手の数だけ味があるといわれるほど。ラーメンの多様性が容認され、2000軒にも及ぶラーメン店が成り立つのは、それだけラーメン好きのニーズが奥深く、魅力の尽きないメニューであることが背景にあるともいえそうだ。

 北海道のラーメン業界が1日も早く逆境を乗り越え、活気を取り戻してほしいと願うばかりである。

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