ウイスキー特集
◆ウイスキー特集:上級品の需要高まる 20年上期、出荷量1割減
新型コロナウイルスの影響でウイスキーに対する消費者の購買行動が変化している。「巣ごもり」消費を背景に、大容量品や普段飲むウイスキーよりワンランク上の上級品を求める動きが高まっているもようだ。(岡朋弘)
20年上期(1~6月)のウイスキー出荷量(課税数量)は前年から1割程度減った。今後は打撃を受けた業務用市場の回復に時間がかかるとみられる。ウイスキー各社は以前にも増して家庭用市場に注力していくものとみられるが、ウイスキーのブランド育成を進める上でも料飲店が提供する価値や良質な飲用体験も組み合わせて市場への提案力を強化する考えだ。
国内ウイスキー市場は国産ウイスキーが約8割を占める。19年までは輸入のスコッチウイスキーの伸びが目立ち国産と輸入の併飲率が拡大傾向だった。商品の選択肢が増えたことに加え、ハイボールなどの飲み方も浸透し、消費者の嗜好(しこう)が多様化していた。
巣ごもり需要の拡大で家庭用が大きく伸長し食品スーパーやドラッグストア、ECチャネルの需要が拡大。節約志向の高まりなどを受け大容量品の伸長が目立った。また、自宅で普段より上質なウイスキーを飲みたいという傾向も見られた。
料飲店で飲んでいたウイスキーを自宅でも楽しみたいという傾向は今後も強まりそう。今後は1本当たり1000円未満の価格帯の商品から1本2000円以上のシングルモルトといったプレミアム品まで幅広く伸長するとみる関係者が多い。多様な嗜好や飲用シーンに合わせた提案が一層求められる。
国内ウイスキー市場は19年まで好調に拡大し海外への輸出も堅調だった。
20年に入ってからも新型コロナが流行する前の1~2月までの出荷数量(国税庁発表、国産・輸入計)は2万7000klと前年を上回って推移していたが、1~6月では前年比10.7%減の8万2620klと大きく落ち込んだ。樽詰めハイボールといった業務用商材が前年売上げを割り込むなどの影響があった。市場を取り巻く環境が厳しくなる中でも各社はウイスキーの価値提案に力を入れる。
プレミアムウイスキー需要の取り込みに向けてアサヒビールは、ニッカウヰスキーの6年ぶり新ブランド「ニッカ セッション」を9月29日に発売した。ECの予約販売は即完売となるなど、消費者からの期待も高いという。イタリアンレストランといった飲食店での飲用機会の創出に努め、SNSなども活用し炭酸で割った「セッション ソーダ」などの飲み方を提案していく。
スコッチウイスキーの需要喚起策では、キリンビールが「ホワイトホース」ブランドで、「国内販売数量No.1のスコッチ」を前面に打ち出した新たなコミュニケーション展開していく。
サッポロビールは「デュワーズ」ブランドで、「12年」以上の長期熟成品の販売比率を高め、認知度や単価アップにつなげる。料飲店向けの施策としては、デュワーズと桜で作る「桜ハイボール」を催事提案していきたい考えだ。
明治屋はブレンデッドスコッチ「ラベル5」を21年1月5日に発売する。消費者の嗜好が多様化する中、ラインアップを拡充し幅広いウイスキーファンの需要に応えていく。