食品産業文化振興会、野本万里子氏が講演 ウクライナ情勢など「状況理解・備え必要」

SOMPOリスクマネジメント・危機管理コンサルティング部の野本万里子氏

SOMPOリスクマネジメント・危機管理コンサルティング部の野本万里子氏

 日本食糧新聞社が主催する食品産業文化振興会は17日、講師にSOMPOリスクマネジメント・危機管理コンサルティング部・野本万里子氏を迎えて「食品業界を取り巻くウクライナ情勢の影響とチャイナリスク ~海外拠点への影響、日本本社でも確認できていますか?~」をテーマに東京・八丁堀の食情報館で開催した。コロナ禍で三密を考慮した会場における講演・受講およびWeb受講とした。野本氏は、海外拠点の危機管理で大切なこととして「生命の安全確保と状況の正しい理解と備え」が必要だとした。

 ウクライナ情勢の影響は、食糧やエネルギー価格高騰という形で現れ、野本氏は「これまでの『経済のグローバル化、サプライチェーン多国籍化』からの移行で、経済圏のブロック化・大国間の対立が生じている」という。「目先の利益より企業倫理を優先するレピュテーションリスクが高まり、これまで手薄だったリスクへの対応も必要になる」と危機認識の変化を示した。

 レピュテーションリスクを低減するには、「カントリーリスク調査」「関係先についての適格性調査」「人権DDなどESGにおいて企業として矛盾のない行動を迅速に取れるか」「社会に対して対応を発信する準備」「いざというときの事業中断や譲渡・売却・撤退など事業再編の準備」が必要だという。

 チャイナリスクの理解として、ネット3法(サイバーセキュリティー法、データセキュリティー法、個人情報保護法)によって外資企業にもコンプライアンス義務を課している点を挙げた。「日系家電メーカーが7月7日(中国国内の盧溝橋事件)に新製品発表の予告を出し、摘発されて約1800万円の罰金を支払っている」事例を示し、日付問題も広告法による縛りを受けることを紹介した。

 人権DD、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の物流への影響、知財訴訟、共同富裕(貧富の格差を是正し、全ての人が豊かになる)についても解説。また台湾海峡での有事や反日デモ、拘束事案への対応も必要になってくると強調した。(宇津木宏昌)

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