料理マスターズ特集
◆料理マスターズ特集:日本の食文化普及、発展に貢献 生産者・食品企業と連携し地域活性化
●第11回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」 シルバー賞4人・ブロンズ賞8人
生産者や食品企業と協働し、日本の食の普及や食文化の発展に貢献する料理人を顕彰する第11回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」授与式が11月9日、農林水産省の講堂で開催され、野上浩太郎農林水産大臣から、生産者や食品企業と連携をして地域の活性化に貢献してきたシルバー賞4人、ブロンズ賞8人の合計12人に授与証とメダルが渡された。2010年の第1回からの受賞者は合計で81人になった。また、同日、料理マスターズ倶楽部主催の懇親会が東京都目黒区の「メゾンプルミエール」で開催され、同制度をサポートする協賛企業と受賞者らの交流や情報交換が行われた。(山田由紀子)
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、授与式会場の講堂への入室は、体温の計測、消毒液での手指の消毒をはじめ、椅子の間隔を空けるなどソーシャルディスタンスを確保して開催された。
例年は審査委員や過去受賞者、受賞者の家族や店舗の従業員、料理マスターズの活動の応援者などが全国から駆け付け、式典を見守る姿があったが、今年は感染防止対応として、歴代受賞者や審査委員らは懇親会で新メンバーの受賞を祝った。
◆授与式
●主催者あいさつ 野上浩太郎農林水産大臣
○食の魅力発信に期待
第11回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」授与式を開催することを喜ばしく思います。
料理マスターズは、料理を通じて地域の「食」や「食材」「食文化」の普及と、その発展に貢献する料理人を顕彰する制度です。これまでに料理マスターズを受賞された方々は全国に73人いらっしゃいますが、各地で生産者や食品企業と連携をして地域の活性化に取り組んでおられます。
今年度はシルバー賞4人、ブロンズ賞8人の計12人の方が受賞をされることになります。
受賞された皆さまのこれまでの努力とその熱意に、深く敬意を表します。榊原委員長をはじめとする審査員の皆さまにはご多用にもかかわらず熱心にご審査いただきましたこと、心から感謝申し上げます。
日本の食につきましては和食が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、国内のみならず世界的にも日本食・食文化への関心が高まっています。
昨年まで訪日外国人数は年々拡大し、本場の日本食を楽しむ外国人の姿が各地で見ることができました。
今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、訪日外国人の減少や外出自粛があったことから外食産業および農林水産業、食品産業は今なお大きな影響を受けております。農林水産省では、「GoToEatキャンペーン」をはじめ財政・金融手段を総動員し、甚大な影響を受けている皆さまに対して支援をしているところです。
また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会や、2025年開催の日本国際博覧会など日本の食が世界的に注目される機会が続きます。今後、国内外の多くの方に日本の食が有する多彩な魅力を知っていただくためにも、「料理マスターズ」受賞者の皆さまには、農林水産業・食品産業と連携し、活躍されることを期待しています。
●審査委員長あいさつ インド経済研究所・榊原英資理事長
○“役目”さらに大きく
シルバー賞、ブロンズ賞受賞の皆さま、おめでとうございます。
料理マスターズが創設されたのは2010年。フランスの農事功労章をモデルに農林水産省が始めたシステムです。初めの6年間はブロンズ賞だけでしたが、7年前からはブロンズ賞を受賞した料理人の中から年間最大5人のシルバー賞を選出しています。ブロンズ賞受賞から5年以上の活動を考慮しながら、シルバー賞が授与されます。
今年は新型コロナウイルスの感染防止対策として緊急事態宣言が発出されましたが飲食店には厳しい環境の中での調査、審査の実施となりました。そうした意味では食と農をつなぐ料理の力が試される年だったといえるかもしれません。
今年のシルバー賞は4人。奈良の「アコルドゥ」の川島宙さん、滋賀県長浜市の「徳山鮓」の徳山浩明さん、福島県いわき市の「Hagiフランス料理店」の萩春朋さん、そして「神戸北野ホテル」の山口浩さんです。
今年のブロンズ賞は8人。日本料理では神戸の「料理屋植むら」の植村良輔さん、京都の「祇園さゝ木」の佐々木浩さんと「美山荘」の中東久人さん、北九州市の「照寿司」の渡邉貴義さん、フランス料理では神戸の「御影ジュエンヌ」の大川尚宏さん、イタリア料理からは大阪の「ポンテベッキオ」の山根大助さん、そのほかのジャンルから、東京の和牛懐石「CROSSOM MORITA」の森田隼人さん、その他ジャンルで石川県小松市の「SH KUD YArn」の米田裕二さんと、多岐にわたります。地域的には、京阪神が5人ということで西高東低の形になりました。
毎年の積み重ねで料理マスターズは80人を超えました。そして来年には初めてのゴールド賞が選出されます。生産者と料理人がつながって日本の第1次産業を元気にしていこうという料理マスターズの姿勢は、資源の持続可能性を含めて時代の流れになってきていると感じます。コロナ禍の中で外食産業は苦境に立たされていますが、日本の食文化を守り発展させていく料理マスターズの役目は今後ますます大きくなると期待しています。
◆料理マスターズ倶楽部主催 懇親会
●主催者あいさつ 料理マスターズ倶楽部・高橋喜幸事務局長
○ウィズコロナへ対応
農林水産省が2010年に創設した料理人顕彰制度である「料理マスターズ」も今年で11回目を迎え、シルバー賞の受賞者も21人となり、受賞者の方々も合計で81人になりました。
私ども料理マスターズ倶楽部は、料理マスターズ受賞者とこの制度の趣旨にご賛同いただいた民間企業の方々で構成しています。そして、この制度を官民一体となって盛り上げる活動を通じて、料理人と第1次産業を結び付け、地方の活性化に貢献するとともに、食品産業や食を取り巻く分野の企業などと連携して地域の活性化や日本の食文化の発展に貢献する活動を行っています。
本倶楽部では、料理マスターズ受賞者による第1次産業と食べ手・消費者を結ぶ活動を広く知っていただく機会を設けています。
プロの料理人の目で地方の加工食品を評価・認定する「料理マスターズブランド認定プロジェクト」を大阪で開催し、同時に生産者や料理人の方々にもご協力いただいてシンポジウムを実施しています。また、マスターズの料理人と生産者の思いを伝える食のイベント「シェフズキッチン」を東京で年に6回程度開催するとともに、地方でも開催し、地方の活性化のお手伝いと料理マスターズの普及に関する活動を行っています。さらに、地方の料理マスターズのお店と、関係する生産者を訪ねる「ガストロノミー&アグリツアー」を企画・実施しています。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために思うような活動ができませんでしたが、ウィズコロナの時代に対応してまいります。
●乾杯ご発声 赤松広隆衆議院副議長
○一層の業界発展願う
銀賞、そして銅賞を受賞された料理人の皆さん、本当におめでとうございました。
この制度ができたきっかけですが、榊原先生が、わたしが農林水産大臣だったときに大臣室にお見えになって、「せっかくあなたが大臣になったのだから、こういう制度をぜひつくってください」と言って帰られた。
農協の理事長や会長さんが表彰される制度はあるが、優秀な世界に負けない料理人たちがこれだけ日本にいて、その人たちを顕彰する制度がない。それはおかしいということで創設に動いたという経緯がございます。いまは世界のいろんな大会で料理人の方が活躍をされ、受賞されるような時代になりました。
日本は、北から南まで緯度の差が大きく、寒暖差によって多種多様な農林水産物が産出されます。また、あるいは日本の食文化を代表する味噌・醤油など発酵食品もありますし、地産地消のさまざまな取組みもございます。
こうした日本の魅力ある食をどのように生かすか、料理人の皆さんに料理を作っていただく。オリンピックにならんで金銀銅としました。来年はやっと金賞にたどり着くことができるということで、最初の金を誰が取られるのか、期待をしております。
もう一つ、この料理マスターズの制度に権威があるのは、榊原委員長をはじめとした11人の審査委員の皆さんが誰もが納得するような方たちだからです。そういう意味で、審査委員の皆さん、お忙しい中、この制度を継続するためにご協力をいただき心より感謝しております。
銀賞、銅賞を受賞された皆さまの今後のご活躍と、本日ご来会いただいた協賛企業と各店がますます発展しますよう、また、それを日本の農業、料理業界、食品業界の発展につなげていくことを願いながら杯をささげたいと思います。
◆農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員
▽委員長=榊原英資(一般財団法人インド経済研究所理事長)
▽委員=犬養裕美子(レストランジャーナリスト)、門上武司(あまから手帖編集顧問・フードコラムニスト)、小泉武夫(東京農業大学名誉教授)、小山薫堂(放送作家)、重田秀豪(インサイト代表取締役)、辻芳樹(学校法人辻料理学館理事長・辻調理師専門学校校長)、仲野隆三(農業アドバイザー・6次産業化ボランタリー)、西川恵(毎日新聞社客員編集委員)、服部幸應(学校法人服部学園理事長・服部栄養専門学校校長)、村田吉弘(菊の井代表取締役社長、NPO法人日本料理アカデミー理事長)
※委員は五十音順(敬称略)