クローズアップ現在:変わる「学食」の役割 飲食業のノウハウが生かされる

2022.07.04 521号 07面
ORIENTAL FOODS オリエンタルFが運営受託する桃山学院大学の学食では、ここを拠点としたさまざまミッションを担っている

ORIENTAL FOODS オリエンタルFが運営受託する桃山学院大学の学食では、ここを拠点としたさまざまミッションを担っている

ORIENTAL FOODS フードトラック事業も行い大学キャンパスで学生が運営するパターンもある

ORIENTAL FOODS フードトラック事業も行い大学キャンパスで学生が運営するパターンもある

ORIENTAL FOODS フードトラック事業によって地方の生産者との交流を重ねている

ORIENTAL FOODS フードトラック事業によって地方の生産者との交流を重ねている

nadeshico ナデシコの学食は150坪100席というゆったりとした空間でディナー帯にはアルコールも提供

nadeshico ナデシコの学食は150坪100席というゆったりとした空間でディナー帯にはアルコールも提供

nadeshico フードメニューは10品程度で500~600円。写真は「近江牛ハンバーグ定食(デミソース)」750円(税込み)

nadeshico フードメニューは10品程度で500~600円。写真は「近江牛ハンバーグ定食(デミソース)」750円(税込み)

nadeshico 大学と共同で研究活動を行うベンチャーの展示も行われている

nadeshico 大学と共同で研究活動を行うベンチャーの展示も行われている

 大学の学生食堂に新しい動きが見られている。学生アルバイトを経営に参画させて高い教育的効果を上げている会社が大学からオファーを受け、学食でのテクノロジー活用、地域社会との交流などをミッションとして担っている事例が出てきた。また、ローカル集中で事業を進める飲食業が学食を拠点に学部と共同で、地場産品を活用した商品開発やイベントを開催するなど、飲食業のノウハウも注目されている。

 東洋大学の学生食堂(白山キャンパス6号館地下1階、以下学食)はさまざまな媒体から「学食日本一」と称されている。同大学の学食は、1300席のフードコートで7つの専門店が出店。この学食の中で3店舗を運営しているORIENTALFOODS(本社/東京都品川区、代表/米田勝栄、)は、学食運営のエキスパートとして注目されるようになった。

 同社ではこの他、東京・五反田で肉バルやワインショップを経営し、スピーディーなオペレーションとロスの低減といったノウハウを生かしてフードトラック事業も手掛けている。この事業は産地との関係性が深まり、地方活性化につなげるプロジェクトに発展している。

 そして、学生に接する機会が多い経験から、学生アルバイトにも積極的に経営参画してもらうようになった。同社の肉バルは地元の肉フェスで2回優勝していて、そのうちの一つ、2014年に受賞した「伝説の牛カツ赤ワインソース」は学生アルバイトが考案したものだ。

 こうした同社の取り組みが20年3月放送のTV番組『カンブリア宮殿』で紹介され、「これからの学食運営」を模索しているところから問い合わせが相次いだという。

 21年4月からはその中の一つ、桃山学院教育大学(大阪府堺市)の学食を運営していて、そのミッションは次の通り。

 ●スマート食堂(モバイルオーダー、AI、テクノロジーの導入):AIによってその日の注文予測や1ヵ月先の売上げなどを判断、食品ロス問題や残飯問題などを解決。

 ●ベンチャー食堂(経営体験、メニューコンテスト、空きスペースプロジェクト):学内の空きスペースをビジネス的に活用する提案、メニューコンテストなど学食がきっかけとなったアイデアを引き出す。

 ●FOOD×FOODプロジェクト(地域とつながる、地域活性化):地産地消をはじめ学食を地域になくてはならない存在にする。

 さらに同社では、4月から桃山学院大学で運営を受託。9月から神戸国際大学で運営受託を予定している。

 滋賀県長浜市に本拠を置き、滋賀県内に15店舗を展開するnadeshicoは、細川雄也代表の前職が地元JAの農業指導員だったことから、地場産品の消費推進を展開。それが高じて16年12月、東京・渋谷に食材がオール滋賀県の飲食店を開業した。しかし営業は苦戦したため、コロナ禍によって事業を滋賀県に集中することを決断し、20年12月に撤退した。すると滋賀県の関係者からオファーが増えるようになり、21年9月からは立命館大学びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)の学食を運営受託している。

 21年7月には、同大学の食マネジメント学部と連携協力に関する協定を締結。学食運営だけではなく「食」を通じた地域交流の拠点となるイベントを開催し、同学部との共同商品開発や、学生のインターンシップも受け入れる。現状進めているのは「やさいバス」という物流の仕組み化。農家がその日の朝に出荷したものを「やさいバス」が回収し、町の各ポイント(=バス停)で飲食店が入荷するというものだ。このほか、大学ではベンチャーの研究機関との間でさまざまな研究が行われており、同社との接点が増えてきた。これらとの関係性から、同社では滋賀県集中の事業姿勢をより深めていく方針を固めている。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

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