クローズアップ現在:サントリーHD傘下となったダイナック 「脱社用・脱宴会」の新業態続々
飲食企業のダイナックは「オフィス街」「ビジネスパーソン」「宴会・社用使い」を得意として160店舗を展開していたが、コロナ禍にあって昨年5月に東証2部上場廃止、サントリーホールディングスの完全子会社となった。同社では現在店舗を110に絞り込み、既存業態を新業態に続々と切り替えている。この新生ダイナックのリーダーとなったのはサントリー出身の人物。これからの外食シーンをとらえた上でのビジョンを描いている。
新生ダイナックの代表、秋山武史氏は昨年9月に就任した。秋山氏はサントリーの中で飲食店の盛業支援を行う「グルメ開発部」に20年弱在籍しており、ダイナック代表に就任する前は、サントリー酒類営業推進本部グルメ開発部部長を務めていた。これまでダイナックは営業本部主導の体質があり、営業本部が業態開発を担当していた。秋山氏が代表に就任してから、専門的なスキルを持った人物が会社の事業を開発するべきだという発想の下で新しく「事業開発本部」をつくった。そこでサントリー酒類のグルメ開発部からも人材を連れて来て事業開発のチームをつくり、秋山氏は代表取締役社長と兼任で事業開発本部長に就任し、業態開発の陣頭指揮を執っている。
同社が開発した新業態は現状、以下の一覧表にある通り。最新のものは8月8日にオープンする「純けい焼鳥 ニドサンド」(大阪市北区)で5業態となる。この中で「焼鳥 ハレツバメ」「釣宿酒場 マヅメ」「北国とミルク」が先行しているが、これらは既存の業態である“焼鳥居酒屋”の「鳥どり」、“鮮魚居酒屋”の「魚盛」、“カジュアルイタリアン”の「パパミラノ」からの業態転換を想定して開発された。それぞれ1号店がオープンしたのは、鳥どり1998年、魚盛2013年、パパミラノ1998年。鳥どりとパパミラノは20年以上が経過しており「1号店がオープンした当時は画期的であったが、今日では陳腐化して衰退期に入っていることは否めない」(秋山代表)としている。10年足らずで新業態に転換することになった魚盛については「ブランドのコンディションとしては変えなくてよかったかもしれないが、店の使い勝手を変える必要があった」(同)と言う。
ダイナックが得意としていた客層や立地、利用シーンは、「オフィス街」「ビジネスパーソン」「宴会・社用使い」であったが、新生ダイナックの中期戦略としては「繁華街」「ミレニアル世代」(1980年から95年の間に生まれた世代)、「日常使い」または「郊外・住宅地」「ファミリー」「食事使い」に向けて事業を展開していくという。「ミレニアル世代をターゲットにしたネオ酒場や、郊外駅前・商業施設でのファミリー向けの食業態など新たなポートフォリオを充実させていく」(同)と言う。
コロナ禍によってお客のライフスタイルは“ニューノーマル”となり、飲食のマーケットも世代交代が歴然としている。このような新時代におけるフードサービスの再構築を、マーケティング寄りの秋山新体制がどのように進めていくのかが注目される。
(フードフォーラム代表 千葉哲幸)