焼肉店伝統の逸品:生野菜でパリパリ食感を演出 半世紀以上続く伝統の看板料理
神戸市・御影の「高麗飯店」は、今年で創業56周年を迎える関西屈指の名店。創始者の清水麗子氏は韓国料理研究家の顔を併せ持ち、焼肉業界に韓国料理の調理を指導した功労者としても知られる。ゆえに韓国料理の真骨頂である野菜料理への思い入れはひとしお。特にビビンバには、創業以来の一風変わったこだわりが息づいている。最盛期は日販80食以上にも達したという高麗飯店のビビンバを紹介する。
独自のこだわりはひと目でわかる。生野菜(レタス、ベビーリーフ、ニンジン千切り)が山盛りにトッピングされているのである。その下には定番のナムルと季節のナムルが全部で7~8種類、鶏ひき肉、生卵が隠れている。それらを一気に混ぜ合わせ、独自配合したコチュジャンを加え、さらに混ぜ合わせれば完成だ。インパクトある見栄えに加え、生野菜のパリパリした食感が、なんとも心地よい。
同店は1966年、「大池食堂」として尼崎市で創業した。当時は定食や麺類を提供する普通の食堂だったが、一品だけ祖国のビビンバを品書きに加えた。それが大好評を呼び、看板料理に台頭したため、4年後、焼肉店にくら替えした歴史を持つ。
2代目の清水義隆店主は「時代と共に味づくりは変化していますが、基本的な商品設計は変わりません。当初はサニーレタスを用いていましたが、20年ほど前、さらに食感のよいレタスに変更しました」と語る。
さらに特筆すべきは、下に隠れている多種多彩なナムルの組み合わせである。定番の豆モヤシ、ゼンマイ、ホウレンソウ、大根を基本に、時々の旬菜を3~4品、アドリブで追加しているのだ。提供時は生野菜に覆われて、見た目にはわからないが、混ぜると数々の彩りが現れ、混ぜるほどに彩り豊かなモザイク状に仕上がる。
「創業以来、ナムルの充実が評価され、ナムル目当ての女性客が多数来店します。ビビンバは、食べ飽きない日替わり丼として、常連さんから支持されています」(清水店主)。
そして味覚の決め手はビビンバ専用のコチュジャンだ。自家製コチュジャンをベースに約10種類の調味料を配合し、牛骨スープを加えてのばしたもので、「丸みのあるソフトな味わいと、混ざりやすい滑らかな粘度が自慢」(清水店主)だと言う。
おいしく、飽きず、健康的。半世紀以上も続く看板料理には、本当に求められる普遍的な要素が凝縮されているといえそうだ。
●店舗情報
「焼肉・韓国料理 高麗飯店」
所在地=神戸市東灘区御影郡家1-21-15
1966年、兵庫県尼崎市で定食店「大池食堂」を創業。96年に現在の御影店に移転。現在、創業店の尼崎店と合わせて2店舗。本格焼肉と野菜豊富な韓国料理を融合させた健康志向の焼肉料理に定評がある。
【写真説明】
写真2:山盛りにトッピングする野菜の下には、定番4種(豆モヤシ、ゼンマイ、ホウレンソウ、大根)のナムルだけでなく、ブロッコリー、小松菜、キャベツ、スナップエンドウなど旬菜4種を合わせている(取材当日の例)。中央には鶏そぼろ、生卵をのせる