特集 野菜の常識変えた工場野菜 生育期間短く収穫多い

1996.08.05 106号 11面

気象条件に左右されない工場生産野菜が注目されている。野菜といえば気象条件により価格が大きく変動するのが常。こうした問題を解決しようと登場したのが植物工場。工場では、水、光、栄養素など野菜に適した環境条件を自由にコントロールし、年間を通し同品質の野菜を生産できる。また、土を使わず水耕のため安全性も高く、生育期間も短いため収穫量も多い。今、こうした植物工場を積極的に展開するプラントメーカー二〇社が加盟し、「植物工場普及振興会」が組織されている。プラント購入者も農協をバックに、白河フーズ、千葉白子グリーンファームなど確実に増産体制に入っているところもあるが、まだまだ点的存在。新しい農業の旗手として期待される植物工場も、知名度はまだまだ低い。二一世紀に向け、どう戦略をとるか興味あるところだ。

植物工場とは何か。注目の植物工場の一つであるキユーピー野菜工場・TSファームを見学した外食関係者からの素朴な質問のいくつかをまとめてみた。

植物工場と水耕栽培とはよく混同されるが、植物工場の野菜は、光、温度、湿度などの地上系と水、養分などの地下系因子に依存しているが、この二つの因子を人工的に制御することで、一年中安定数量、同品質野菜が生産できるシステム。

地下系因子に依存する水耕野菜とは異なるわけだ。

三つのタイプに分けられる。

一つに、外界と遮断し人工光だけで生産する人工光型。環境づくりが容易であるが、電力消費が大きい。

二つ目が人工光と太陽光の併用型。主に太陽光を利用するが、雨天、夜など光が弱いときは人工光を使用する。太陽光が強すぎるときは遮光カーテンで光をコントロールする。人工光型より電気代が安くなる分、光や温度のコントロールが難しくなる。

もう一つ、太陽光型。現実には制御が難しくできても設備費が膨大となる。太陽光集光装置や熱線吸収フィルムの利用が実用化されれば密閉型植物工場も夢ではない。

通常の水はさまざまな養分を含むが、大量生産のため不足分を化学肥料で補う。

肥料は窒素、リン酸、カリウムのほか、マグネシウム、鉄など。

肥料は水溶性で、イオン分解された状態で吸収され、これは土でも同じで問題はない。

また、外界を遮断した密閉式はほとんど無菌状態。洗わずに食べられる野菜はこうした環境で生育する。一般に菌数は、土耕より少ない結果を得ている。

栄養分については土耕とほとんど同じ。

各メーカーによって異なるが、TSファームは標準タイプ五〇〇平方メートルで約一億三〇〇〇万円。川鉄ライフは一〇〇〇平方メートルで約一億五〇〇〇万円。

これら費用は、平成11年まで生産流通体制高度化事業の一環として、五〇%の政府補助がある。また、条件を満たしていれば地方自治体から一〇~二〇%の補助もある。

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