ピザ生地・焼成の研究 クリスピーを上手に焼くには

1996.09.09 109号 8面

●メーンの2種類

最近のデリバリーピザ店やファミリーレストランでは、注文の際にピザの生地が選べるようになってきている。カリカリするという意味のクリスピータイプ(イタリアンクラスト)とレギュラータイプ(パンクラスト)の二種類が主流だ。

ピザは小麦粉、水または牛乳で溶いたイースト菌、油脂、塩、水といった材料を用いる簡単な生地で作るが、クリスピータイプとレギュラータイプの生地を作るに当たって成型時の生地の厚さの違いだけではなく、それぞれの材料の特性を考慮する必要がある。また、クリスピータイプの場合は焼き上がった生地がトッピングや外気の水分を吸収してしまうので、デリバリーに要する時間の考慮が必要だ。

小麦粉は、グルテンの質と量によって強力粉、中力粉、薄力粉に分類される。強力粉に含まれるグルテンが最も多く、タンパク質にも富んでいる。小麦粉に水を加えてこねる段階でタンパク質が汲水して膨張し、こねることにより粘りと弾性に富んだ網状の組織を形成する。

●まず粉の配分比

このグルテンの生成は原料小麦の種類によって異なり、こねるときの条件と方法によっても違いが生じる。タンパク質量の多い強力粉の場合は給水力が多く、長時間でグルテンが生成され弾性が強くなるので十分にこねる必要がある。しかし、こねすぎた場合にはグルテンの組織の一部がきれて軟弱化する。強力粉、中力粉、薄力粉の配分比において、一般にクリスピータイプの場合には強力粉の配分が多くなる。

イースト菌は、発酵温度や時間により酵素の働きにより化学作用を起こし炭酸ガスを発生させて生地の熟成を行う。その時、発酵の進捗状況を見極める必要がある。クリスピータイプの場合にはイースト菌の量は少なめにするのが一般的。

油脂の生地に及ぼす働きは、生地の容積が増す、組織が細かくなる、皮が薄く柔らかくなる、口当たりや触感が良くなる、香りが増すというようなものだ。しかし、生地をこねる最初の段階から油脂を混入するとグルテンの生成が妨げられ、時には生地の膨張作用が行われない場合がある。

グルテンの生成ができてから添加すると汲水が減りグルテンの均一な組織ができるというような効果を発揮する。クリスピー生地には本来油脂を加える必要がないが、生地の老化を遅らせる働きもあるので最小限の油脂の添加も考えられる。

●重要な水の役割

水の仲立ちにより、材料が均一に分散され、科学変化がスムーズに行われる。水の使用量により、生地の性質が変わり、出来上がりが左右される。硬水の場合にはグルテンを硬化してしまうので、汲水量を増し発酵時間を長くしなくてはならず、逆に軟水の場合にはグルテンを軟化しねばつかせるが、発酵時間は短くなる。一般的にはやや硬水の方が適しているといわれている。

食塩には九九%以上の塩化ナトリウムと塩化カルシウムや塩化マグネシウムなどの鉱物質が含まれており、この不純物である鉱物質の存在が生地に改良効果をもたらす。

以上のような材料の特性を考慮してクリスピータイプとレギュラータイプのピザ生地のレシピーをまとめる必要がある。

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